第五十話 合印決定選、一ノ選! パフェット!

 ここは、第三区域の合印邸の中にあるシオンの間だ。ここが、一ノ選の会場だ。広い室内には中央に長机を前に各々の決定人が椅子に座っている。そして、その長机の前には向かい合うように、暗号椅子が一脚置かれてある。その暗号椅子には現在、パフェットがちょこんと座っていた。暗号椅子に座っているパフェットには、暗号が絡みついている。構わず、パフェットは手を叩き合わせて開いた。


「解読!」


 まばゆい光が明滅して、暗号が雲散霧消した。

 ぱっぱらっぱっぱぱーと、どこからともなく効果音が鳴った。


 『暗号が解読されました! おめでとうございます!』


 アナウンスと共に、一緒に解読された答えが空中に表示される。


【答え:合印決定選一ノ選、適格!】


「パフェットさん、適格です」決定人の一人がにこにこして言った。

「やってやったですっ! ありがとうございました、ですっ!」


 パフェットは一礼して、シオンの間から退室しようとした。

 続けざまに、アナウンスが邸内に響き渡った。


『百八番、ガーリックさん! シオンの間に入ってください!』

「次はガーリックさんの番でしたか! ここで待っているですっ!」


 パフェットは、退室しないで、壁に凭れて立っていた。しかし、待てども待てどもガーリックが来る気配がない。頭に花を咲かせて立っていたパフェットだったが、ハッと我に返った。


「あ、マズいですっ! ガーリックさんが一人SMプレイ中なのを忘れていたですっ!」


 決定人の小声が聞こえる。


「これは、ガーリックさん、失格ですかねー?」

「一ノ選に参加しに来ないとは、勿体ないですねー?」

「本当にねー?」

「やはり、新聞に載っていたのは嘘だったのかもしれませんねー?」

「そうねー?」


 パフェットの額に汗がたらりと滴る。


「助けに行くですっ――」


 パフェットが、両開きのドアを開けて急いでガーリックを救出に向かおうとすると、目の前に壁が立ちふさがっていることに気づいた。


「えっ……って、あッ!」


 壁を見上げたら、手が降ってきてパフェットの頭にポンと乗った。


「待たせたな、パフェット!」

「ガーリックさんっ! 良かったですって――え゛っ?」


 パフェットは、何かに気づいてその場に固まった。

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