第十八話 暗号VS俺VSメイド!? もしかして、窮地の俺!

 パフェットと引き離されて、戦力が二分してしまった。パフェットと一緒に解読したときは、暗号が分裂しすぎて増えに増えた。しかし、今はその増え方も落ち着いている。とは言っても、スキュエア様が開け放ったドアからは、とめどなく暗号が流れ出てきている。


「どうすんだ、これ。いや、もしかしたら、パフェットの解読の仕方が悪かったのかもな」


 俺は、そうそうと頷く。


「暗号の森では、俺が一発で解読したし。どこをどう取っても、パフェットの解読の仕方が悪かったからだよな」


 一人気を良くして納得した俺は、もう一度解読を試みることにした。

 手をパンと叩き、呪文を唱える。


「解読!」


 暗号がほのかに光る。微かに震えたと思った次の瞬間――。ドバッと増えた。


「っ!? パフェットのせいじゃなかったのか!?」


 俺は心の中で謝るだけパフェットに謝った。しかし、パフェットの鼻で笑った顔が思い浮かんだので、謝るのを止めた。


「もしかして、かけ方が悪かったのか?」


 俺は、にこにこ笑いながら、呪文を唱えた。次の瞬間、ドバッと増えた。


「ダメか」


 俺は、そっと小声で呪文を唱えた。次の瞬間、ドバッと増えた。


「やっぱり、ダメか」


 俺は、激怒しながら呪文を唱えた。次の瞬間、ドバッと増えた。


「次は――」

「誰だ! 暗号をこんなに増やしまくったトンチキ野郎は!」

「脳みそ、暗号に変えてやろうか、ボケェ!」


 窮地に追いやられたメイドたちが豹変しだしたので、寒気を覚えた俺は、解読をするのを止めた。


「増やし過ぎてしまった。このままだと庭の外に暗号が――アレ……?」


 よく見ると、暗号たちは庭の外に出て行こうとはしない。水の入ったグラスにパウダーを入れたかのようだ。グラスのような透明な結界に阻まれたのか、庭の遥か上方まで暗号たちが庭の外にあふれることはなかった。


「どうして、暗号たちが庭の外に出ないんだ?」


 グラスにふたをしたように、それは上空五メートルぐらいから出ようともしない。塵が掃除機の中に溜まって行くときに似ている。


 そこまで考えて、俺はハッと勘付いた。


「ちょっと待ってくれ! このままだと、俺たち圧死じゃないか!?」


 俺は落ちゲーのようなゲームオーバーを想像して、ようやく焦り出した。


「が……ガーリック……さん……!」

「ん? なんだ?」


 唐突にか弱そうな声が聞こえてきた。

 下に目をやると、二人が素早く這って来て、俺の両足をガシィと掴んだ。


「っあああああああああああああああ!?」


 思わず絶叫する俺だったが、よく見るとパフェットとアヒージョだった。

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