第十九話 俺とルーウェルの邂逅!

「暗号たちの間を避けて来たですっ……!」

「かなり、疲れましたわ……!」


 パフェットとアヒージョは、息を切らしている。

 この世のものとは思えなかった姿を目撃した俺は、魂が半分離脱していた。


「それでですね、ガーリックさんっ!」

「な、なんだ?」


 俺はハッと我に返った。俺の顔もシュッとなる。


「この暗号文は解けますかっ? アヒージョさんが第四区域の合印のマルネス様から鍵文を貰って来たそうなんですっ。この暗号文が鍵文らしいのですが、暗号の森を通ったときに文章が暗号化してしまったらしいですっ」


 パフェットが封筒から、呪文が暗号化した便箋を取り出している。


「はぁ? 鍵文? 『鍵文』ってなんだ?」

「暗号を解くための『鍵の文章』ということですの!」

「つまり、この暗号を解くためだけの呪文みたいなものですっ!」


「はあ。その鍵文が暗号化したと。暗号の森を通ったから……?」


 変な違和感を感じた俺だったが、それが何なのかが分からない。


「まあ、良いよ。俺がその暗号文を解読してみるよ」

「私が、暗号文を持ちますっ!」


 気合を入れてから、俺は手をパンと打ち合わせて開く。


「解読!」


 しかし、俺の呪文は暗号化した記号を並べ直すことはできなかった。暗号文の記号は便せんの中で一瞬光って震えるだけだ。何も起ころうとしない。

俺は、力を振り絞りながら連続で繰り出した。


「解読! えっ? これも駄目なのか?」

「ガーリックは、まだ解読できていないようですね」


 傍で、知らない男が俺を見ている。見世物じゃないんだが。


「解読! 解読! 解読! あー、駄目だ……!」


 俺は、呪文を唱え過ぎて汗だくになっている。服の袖で顎から滴る汗をぬぐっていた。


「ルーウェル様、こちらです!」

「分かりました」


 知らない男はそのまま、立ち去ろうとした。

 どうやら、退屈になったらしい。

 俺は、やけっぱちで呪文を繰り出した。


「解読ッッッ!!」


 暗号が明滅した。途端に、知らない男の持っている手荷物からまばゆい光が放たれる。


 知らない男は、ギョッとして立ち止まった。


「なっ!? アスタリスクが!?」

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