第十七話 パフェット、アヒージョに手助けされる!?

「この暗号、なんで増えまくるんですかっ?」


 パフェットは途方に暮れて、頭を抱えていた。


「ガーリックさんとは離れ離れになって戦力分散だし、暗号をただ眺めることしかできないですっ」


 その間も、スキュエア様が開け放ったドアからは、暗号がとめどなくあふれ出てきている。


「どうするですかっ? この間のようには暗号たちが襲って来ないですが、このままだと庭の外にもあふれ出るですっ」


 パフェットは、腕を組んで考えた。


「でも、さっきはガーリックさんが原因で増えたのかもしれないですっ! 一人で解読してみるですっ!」


 パフェットは、早速手をパンと打ち合わせた。声高らかに唱える。


「解読っ!」


 解読すると、またしても暗号たちがほのかに明るく光った。


「今度は、解読できるですかっ!?」


 すると、暗号がにゅっと二つに増えた。そして、四つに増えてさらに十六に増える。それが、かなりの数が一度になので、キリがない。


「またしても、増えるですかっ!?」

「誰だ! 暗号を馬鹿みたいに増やした奴は!」


 愕然としているパフェットに、メイドたちが口々に激怒したので、パフェットは内心平謝りするのだった。


「ど、どうするですかっ? 増えるなんて対処できませんっ!」


 その時、か細い声が風と一緒にパフェットの耳に入ってきた。そのか細い声は大きくなり、呼び声になる。


「……さーん! パフェットさーん!」

「アヒージョさんっ!?」


 アヒージョが、何かを手に息を切らしながら駆けて来た。暗号を避けながらこちらにやってくる。広い庭を駆けて来たのか汗だくだ。アヒージョは急いで、パフェットに封筒を手渡してきた。


「どうしたんですかっ? アヒージョさんっ? これはなんですかっ?」

「パフェットさん、第四区域の合印のマルネス様から手紙を預かってきましたの! それがそうですわ!」

「手紙ですかっ?」

「この手紙には暗号を解読するための『鍵文かぎぶん』が書かれているのですわ!」

「流石、アヒージョさんですっ! じゃあ、早速その鍵文を読むですっ!」


 パフェットは、急いで封筒を開封した。中から便箋を取り出すが――。

 書かれているのは、読めない記号だった。つまり暗号文だ。


「えっ!? なんで暗号文なんですかっ!?」

「あっ! 暗号の森を途中で通ったからかもしれませんわ!」

「ま、まあ良いですっ。この暗号文を解読すれば万事解決ですっ」

「ふふふのふですわ! そのとおりですの!」


 アヒージョが暗号文を書いた便箋をパフェットに見せるように両手に持つ。

 パフェットは気を取り直して、手をパンと叩き、呪文を唱えた。


「解読っ!」


 しかし、今回は、その便箋から暗号文の暗号があふれ出ることはなかった。文面に並んだ記号が一瞬光って震えるものの、解読して整列しようとはしない。


「なっ!? 解けないっ!?」


 パフェットは、何度も解読しようと試みた。しかし、どうやっても暗号文が解読できることはなかった。


 パフェットは、泣きそうになっていた。


「どうしたらいいですかっ!」

「本当に、どうしたらいいんですの……これを解けるのは……」


 脳裏にひらめく速度が同じだったらしい。パフェットとアヒージョはパッと顔を見合わせた。


「ガーリックさんですっ!」

「ガーリック様ですわ!」

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