第十五話 暗号が解けない!? 離れ離れな二人!

「では、パフェットさん。これを解いてください」


 そう言ってドアを開けたスキュエア様の表情は、陰影がくっきりしていた。思わず俺は固唾を飲んだ。

 開いたドアからは、暗号と思われる記号達があふれ出してきた。まさに、暗号の森の暗号そのままだった。どうやら、第五区域の合印邸の中が暗号の森と繋がってしまったのは本当のようだ。


「本当にこれをパフェットが一人で解くのか?」


 案の定、隣を見るとパフェットは固まっていた。


「スキュエア様! 危ないので早くドアを閉めてください!」


 メイド達が、スキュエア様に駆け寄ろうとしたが、暗号に阻まれて近づけないでいる。

 辺りは悲鳴混じりで騒然となっている。


「このままじゃ暗号にやられてしまいます!」

「スキュエア様! 早くドアを!」

「この暗号はパフェットさんとガーリックさんが解くと言ったんだ! 見事に解いて貰おうじゃないか!」


 スキュエア様は、気が触れたように声高に大笑いしている。

 パフェットは増えていく暗号を前にして、棒立ちになっている。


「パフェット、こうなったら一緒に呪文を詠唱しよう!」

「や、やってみるですっ……!」


 俺たちは、深呼吸して暗号の方を向いた。そうして、手をパンと叩く。


「「解読!」」


 声高々に唱えると、暗号が薄っすらと光った。


「やっぱり駄目なのか?」

「こないだは上手くいったのに駄目なのですかっ?」

「しかも、今回はパフェットと一緒に呪文を詠唱したのに。まったく無意味じゃないか」

「よく考えたら、スキュエア様でも無理だったのに、私たちにできるはずがないですよっ!」


 思案に暮れていると、光っている暗号たちに変化が訪れた。暗号が分裂して増え始めたのだ。


「「え゛」」


 辺りが一層騒然となった。


「ど、どうするんですかっ?」

「もしかしなくても、俺たちのせいだよな?」


 呆然自失になっていると、暗号がこちらにも迫ってきた。俺とパフェットの間を、暗号の怒涛のような記号の群れが引き裂く。


「っ!? パフェット!?」

「ガーリックさんっ!?」


 気が付いた時には、パフェットの姿が遠くになっていた。

 

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