第十二話 第五区域の合印邸!? あるものを探せ!?

「ここって、第五区域の合印邸あわせじるしていですわ!」

「えっ!? 第五区域の合印邸あわせじるしていですかっ!? もしかして、懸賞金って第五区域の合印様あわせじるしさまから受け取るのですかっ!?」

「第五区域の合印様あわせじるしさま……?」


 聞き慣れない固有名詞だ。


「もしかして、この区域を治めているのがその合印様なのか?」

「その通りですっ! 七年ごとに合印決定選があるので、それで参加者が競って決まるわけですっ!」

「なるほど! 貴族でも皇族でもなく、一般区民から決めると!」

「第五区域の合印あわせじるしがスキュエア様で、第四区域の合印がマルネス様、第三区域の合印がクエッション様ですっ!」

「はー、合印って区域ごとに居るんだな」

「合印様は、自分の両手の人差し指と親指で枠を作ると、その中に自分を合印だと認めるアスタリスクが浮かびますっ。両手の人差し指と親指を合わせて印を現すことから、区域を治めるお偉いさんを合印様と私たちは呼ぶのですっ!」

「なるほどな!」

「懸賞金のためですっ! 受け取りに行こうですっ!」

「パフェットさんの言う通りですわ! ふふふのふですわ!」

「ああ、懸賞金貰って来ようぜ!」


 俺とパフェットは、御者のアヒージョと一緒に、ユニコーンの荷馬車で移動した。一分間の早送りの景色を眺める。全く揺れることがないユニコーンは最高の走りで俺たちを送った。


「着きましたの! ふふふのふですわ!」

「アヒージョさん、ありがとうですっ!」

「アヒージョ、サンキュ!」


 俺は、瞬間移動したような見慣れない景色に戸惑っている。パフェットは荷馬車から降りている。続いて俺も降りたが、アヒージョは御者台から動こうとはしない。気になって、御者台の方に回った。


「アヒージョは一緒に行かないのか?」

「私は荷物の番をしてますの! ガーリック様とパフェットさんで行って来てくださいな!」

「え? まあ、良いけど?」

「ふふふのふですわ!」

「ガーリックさんも行かないですかっ?」

「ああ、分かった!」


 俺とパフェットは門の方に歩いていく。槍が並んだような柵の向こうには、広い芝生の庭が広がっている。その向こうに見えるのが第五区域の合印邸のようだ。


「パフェット? 門ってどこだ?」

「門って感じのするところ、だと思うですっ!」

「門って感じのするところが、全く見えないんだが!」


 槍のような柵が見えるだけで、門らしいところが全く見当たらない。途方に暮れていると、向こうから人がやってきた。メイドの格好をしている。恐らくは、この第五区域の合印邸で雇われているメイドだろう。そのメイドは、急いで俺たちの方に駆けてきた。そして、俺たちの前で息を切らしている。


「ガーリック様とパフェット様ですか?」

「あ、ああ」

「そうですっ!」

「良かった! まだかまだかと待っていました! ガーリック様とパフェット様!」


 そのメイドは、俺たちだとわかって大喜びだった。目に涙すら浮かべている。俺は、アレ? と、違和感を感じた。なんだろう、この歓迎ぶりは。暗号文が解けたのがそんなに嬉しいのだろうか。けれども、懸賞金を出すのは合印様なのに。しかも、百万エスの懸賞金をだ。合印様だから、その程度の懸賞金を出すぐらい容易いのだろうか。


「えーと……」


 どうしてこんなに歓迎されているのだろう。戸惑う俺に、メイドは一枚のカードをエプロンのポケットから取り出した。


「解読!!」


 メイドは、カードを槍の柵に翳して唱えた。すると、カードから光る記号があふれ出る。そのまま、その記号は槍の柵に反応して、ボワンと煙を立てた。


「な、なんだ?」


 当惑していると、槍の柵は門になっていた。


「すげぇ! 柵が門になったぞ!」

「すげー、ですっ!」


 物凄い手品を見たような感動の後で、メイドが勇ましく言い放った。


「もはや、一刻の猶予もありません! 早く中に入ってください!」

「は、はぁ……」


 俺は、パフェットと目を見合わせた。


「なんだろうな?」

「そうですねっ?」


 懸賞金をくれるのに、一刻の猶予もありませんとはどういう意味だ?

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