第十話 スマホがないので、暗号文が解読できない!?

「ちょっと用紙を広げて持ってくださいっ!」

「こうか?」


 俺は、パフェットに言われたとおりに暗号文の書かれた用紙を広げて持った。パフェットは一メートルぐらい離れて、俺に向き合う。パフェットは、深呼吸して開眼した。手をパンとたたき合わせる。そして、呪文を言い放った。


「解読!!」


 パフェットの呪文を言い放った声が振動音を帯びる。すると、俺の持っている用紙の中の暗号が一瞬光った。そして、暗号の記号が用紙の中からあふれ出した。それが、解読されて用紙の中に再び収まった。


「解けたのか?」


 アヒージョが、俺の前に回って、ひょいとのぞき込む。


「あ。解けてますわ!」

「流石は私ですっ! やってやったですっ!」

「流石はパフェットだな?」


 俺は、広げてパフェットの方に向けていた用紙をこちらに向けてから、文章に目を通した。


「何々? 『暗号文が解けた方へ。懸賞金を手渡しますので、至急ここまで来てください』だってさ」


 一通り読んだ俺は、パフェットに用紙を手渡した。パフェットの横に、アヒージョが並ぶ。


「懸賞金たんまりですよっ! 至急、行くですっ!」

「では、早速行こうですわ! ええと、地図は……あ、あれ?」


 アヒージョが、用紙に書かれてある地図を見て目を瞬いている。パフェットも、それに気づいた。


「ガーリックさん、これって何ですかっ?」


 パフェットが手招きしている。なんだろう? 俺は、パフェットの隣から用紙に書かれてある地図を覗き込んだ。


「それは、携帯やスマホで読み取るとそのアドレスのサイトに飛ぶっていう。名前は確か……、QRコードじゃなかったか?」


 俺は、ポケットを探った。


「確か、ここに入れていたような……?」


 確か、いつもポケットに忍ばせているはずなのに、どこにもない。


「アレ? いつもここに入れていたんだけど……」


 一生懸命探している俺の方に、パフェットとアヒージョが近寄ってきた。


「昨日、どこに置いたっけ?」


 俺は、一生懸命考えた。すると、昨日の出来事が頭をよぎる。


「確か、クロスワードパズルを解いていたときに、変な眩暈がして、スマホで救急車を呼ぼうと思ったら……」


 俺は、ハッとして頭を抱えた。


「あっ!!」


 いきなり大声を出した俺に、パフェットとアヒージョが驚いて仰け反っている。


「な、何ですかっ!?」

「吃驚ですわ!」

「スマホはあの時に落としてしまったか……」


 QRコードがあるということは、この異世界にもスマホがあるのではないか。


「パフェットとアヒージョのスマホは?」


 二人は首を横に振った。


「ということは、俺たちは懸賞金が獲得できないのか……?」

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