第八話 第五区域の街で買い物をしよう!

 パフェットの家の第五区域にある街に行こうと、荷馬車に乗った。


「荷馬車か。荷馬車で何分ぐらい時間がかかるんだ?」

「一分ぐらいですわ!」

「は?」

「運送屋の荷馬車は、依頼した暗号文を回収しますの。だから、移動の時間が空間転移並みのユニコーンで移動するのですわ!」

「ほ、ほぉ。ユニコーン……」


 荷馬車の荷台を移動して、ユニコーンを見た。すると、角が生えた白馬が二頭、手綱に繋がれていた。ユニコーンの角は美しく、目は黒く艶やかで、毛並みは真っ白で光り輝くようだった。俺は、本当にファンタジーの世界に来てしまったのか。俺はその幻想的な生き物に、しばらく目を奪われていた。


「ユニコーンでも、暗号の森を通るときは、暗号の力に阻まれて、普通の馬の速度になるのですけれど、第五区域内で移動する分には特に問題ありませんの」

「じゃあ、早速行こうですっ!」

「お、おう!」

「では、出発しますの!」


 いきなり走り出したユニコーンだったが、荷馬車からの景色が光の筋のようになって物凄い速度で移り変わるのに、荷馬車の荷台は揺れる気配が全くない。光の筋をぼうっと眺めている内に、一分が過ぎてようやくユニコーンの荷馬車は停止した。


「着きましたわ! ガーリック様、パフェットさん!」


 まるで、レンジでチンしたかのように、アヒージョが言った。

 アヒージョは早々と、荷馬車の御者台から降りている。


「アヒージョさん、ありがとうですっ!」

「お、おお、サンキュ……!」

「ふふふのふですの」


 パフェットとアヒージョは、ごく普通に不思議がることもせずに荷馬車から降りた。瞬間移動並みの速度なのに、障害物に阻まれないで到着したのだからすごいものだ。

 いつの間にか、辺りがにぎやかさを増していた。俺も荷馬車から降りると、端然とした街が広がっていた。この異世界には自動車はないらしい。馬車や荷馬車ばかりが普通の速度で道を行き交っている。


「パフェットさん。私、解読した郵便物を運送屋に届けて来ますわ!」

「分かったですっ! 行ってらっしゃいですっ!」

「ガーリック様、そういうことですので!」

「ああ、分かった。また後でな」

「ふふふのふですの!」


 アヒージョは、俺たちとここで別れた。


「さて、見て回るか……!」


 そうして、アヒージョが帰ってくるまでの間、俺とパフェットは買い物を大いに楽しんだのだった。

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