第七話 暗号文の解読の依頼? アヒージョ登場!
一人大慌てしていたその女は、深呼吸すると顔を上げた。
「私は、アヒージョ《Ajillo》ですわ……!」
「俺は、ガーリックだ。よろしくな!」
「私は、パフェットさんの解いた暗号文を回収してますの……!」
「ふーん。ということは、今日もそれでこっちに?」
「そ、そういうことですわ。今日は、暗号文の解読の締め切りで、パフェットさんを急き立てに来たのですわ……!」
アヒージョは初対面のせいかぎこちないが、俺に好意的な態度で接してくれた。
確かに、今日が締め切りだったら、あのままでは間に合わなかった。
「とにかく間に合ったな!」
「よ、良かったですわ。ガーリック様のお陰ですわ……!」
「じゃあ、この散らかった解読済みの手紙を何とかしなければならないな!」
「そうですわ! いつもは少しだから、私だけでも事足りるのですけれども、この量は私だけでは運べませんの。外に荷馬車を用意してますので、運んでくれません?」
「分かった! アレ? パフェット?」
一人背中を向けて突っ立っているパフェットに声をかけた。パフェットはビクッと震えた。そして、ぎぎぎぎぎ……と振り返った。何故かパフェットの眼が血走っている。
「パフェット、なんか怒ってないか?」
「私も全部まとめて解読したら良かったですっ!」
「まさか、そのことに気づかなかったとはな!」
パフェットは相当鈍いらしいな。
そんな失礼なことを続けようとしたら、パフェット様が血走った眼でキッと睨んできた。
「一度に全部解読できたら苦労しないんだっ! ですっ!」
「え゛?」
パフェットは机に両手をついて、さめざめと泣き始めた。
……もしかして、俺が泣かしたのか……?
「パフェットさん?」
アヒージョが声をかけた。パフェットの傍に歩いていく。そして、持って来たバッグの中から布の袋をどさどさとパフェットの机の上に置きだした。
「パフェットさん、これ報酬ですの!」
「なぬっ? 報酬ですかっ! わぁ、こんなにですかっ!」
「ふふふのふですの! 合計、二十エスですの!」
「エス?」
「このアステリア国の貨幣単位ですの!」
小さなずっしりとした袋が二十も出てきた。
「ガーリックさん、報酬ですっ!」
「……俺はこれだけで良いから!」
「えっ!? 一エスだけですかっ!?」
俺が、一つだけ布の袋を取ると、パフェットの目がキラキラと光った。しかし、パフェットはハッと我に返ったようだ。
「ダメですっ! せめて、五:五でガーリックさんの取り分は十エスで、私の取り分も十エスじゃないとっ!」
「じゃあ、それでいいからな」
「チクショーッ! 良い奴だなっ! ですっ!」
ひとまずは、パフェットの機嫌が直ったので安堵した。
アヒージョが、両手をパンと軽くたたき合わせた。
「それで、今から第五区域の街に戻るのですが、買い物していきませんの? 乗せてあげますわ!」
第五区域の街で、買い物か。
確か、他の区域を行き来するには、暗号の森を通らないと無理だと、パフェットが言っていた。
「第五区域って確か、ここだよな? 第五区域の街っていうことは、暗号の森を通らないのか?」
「その通りですの。ですから、安心ですわ!」
「異世界の街か。興味があるな」
「私とアヒージョさんと一緒に行こうですっ!」
「ああ。せっかくだから行こうか」
「ふふふのふですの!」
そうして、俺たちは第五区域の街に向かうことになったのだった。
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