第六話 解読対決!? 俺VSパフェット

「私も頑張りますのでっ! よろしくお願いしますっ!」


 パフェットは解読するために、暗号文を机の上に並べた。

 椅子に「よいしょ」と座っている。

 俺の背の高さより高い暗号化された手紙の山を見ていると、口元が引きつるようだ。


「解読っ!」


 便せんの中の記号が一瞬光ると、そこから記号があふれ出した。その記号が解読されてまた便箋に収まる。


「こんな風に解読してくださいっ!」


 パフェットが暗号解読スキルを使って、暗号文を一枚解読して見せた。


「……」


 俺の表情は、きっと道路でつぶれた蛙のようになっていたに違いない。

 俺は、仕方なく暗号文の山に手を出した。

 暗号文を真ん中から一つ抜き取ると、案の定一斉に山が崩れた。


「っ……!?」


 俺はあっという間に暗号文のその中に埋もれてしまった。

 暗号文は紙なので痛くも痒くもなかったが、俺の頬は引きつっていた。


「ガーリックさん、面倒でしたら、十枚一度に解読すると良いですよっ!」


 うつろな目をそちらに向けると、パフェットが「解読っ!」と、札束のように広げた用紙十枚一度に解読していた。文面の記号が明滅する。そして、記号が空中を躍り、解読されて用紙の中に帰って行った。


「こんな風にですっ!」


 パフェットは得意満面で俺に見本を示してくれた。


「ほぉ……。一度にやればいいのか……」

「ちゃんと解けてますっ! 流石、私ですっ!」


 パフェットは自分で解いた暗号文をチェックしてニマニマしている。

 俺は単純思考で考えた。


「なら、十枚と言わずに、全部!」

「えっ!?」


 パフェットは、俺の言葉に驚いてこちらに顔を上げた。


 丁度そこに、部屋のドアが開いた。


「パフェットさんは、ご在宅ですの~? 暗号文は解読できましたか~?」


 俺は、構わず両手をパンと叩き合わせて広げた。


「解読!!」


 暗号化された用紙の中の記号が激しく明滅する。

 そして、用紙の中から記号が部屋中にあふれた。

 それが空中を浮遊すると、元の用紙の中に解読されて帰って行った。


「なっ!?」

「一度に、ですの!?」


 俺の解読力のせいか、暗号文の用紙がひらひらと、お好み焼きの上の鰹節のように揺れている。


 俺は、全力疾走したかのように、汗だくになった。

 再び暗号文の中に横たわる。

 爽快感がたまらない。俺は悦に入って大笑いした。


「う、うそ……っ! 一度にこの暗号文の山をですか……っ!?」


 パフェットが暗号文を一つ一つ手に取り、かじりつくようにチェックする。


「と、解けてますっ……これも、これもっ!?」


 パフェットが愕然としている。

 おそらく、パフェットもこんな無謀なことは初めてなのだろう。


「一気に片付いたな!」


 体力を持ち直した俺が立ち上がると、見知らぬ女子が放心したように俺のことを見つめていた。パフェットと同い年ぐらいだろうか。


「あんた誰?」

「う、え、あ!? えええ!? わ、私ですの!?」


 尋ね返すと、その子は大慌てしていた。不思議な子だなと俺は思った。

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