第五話 暗号の森と依頼の山の関係!

 俺は瞠目しながら、数枚の書類をめくっていく。


「これも……! これも、これも……! これも、これも……!」


 手渡された書類は五枚だったようだ。それだけは確実に理解できた。

 しかし、書類に書いている内容がまったく理解できない。

 記号がびっしりと紙面を埋めているのみだ。

 まるで、暗号の森の罠みたいな――。


「これは、もしかして全て暗号か?」


 パフェットはニヤリと笑った。


「その通りですっ! 文章に暗号がかかっているものを『暗号文』と言いますっ!」

「ちょっと待ってくれ? ということは、パフェットは諜報員か何かか?」


 命がけの依頼でもこなしているのだろうか。

 そういえば、先ほども暗号の森で窮地に陥っていたような――。


 しかし、パフェットはかぶりを振った。


「いいえっ! 違いますっ!」

「えっ? 諜報員じゃないのか?」

「はいっ! ここに来る途中に暗号の森がありますよねっ!」

「ああ、あったな」

「他の区域を行き来するには、どうやっても暗号の森を通らなければならないのですっ!」

「それが、一体なんなんだ?」

「なんと、暗号の森を抜けると、不思議なことに持っている文章に暗号がかかって文章が暗号化されてしまうのですっ!」

「えっ? 暗号化するのか? 暗号の森を通り抜けたら?」

「はいっ!」


 本当に厄介な暗号の森だ。

 しかし、物は考えようだ。

 赤点の答案用紙のような物があれば、暗号の森に持って行けばいいのでは?

 俺の思考を遮るように、パフェットが続けた。


「だからですね、暗号の森を通る手紙も当然あるわけですっ!」

「なるほどな。パフェットは暗号の森を通って手紙が暗号化された暗号文を、暗号解読スキルで解読するのが依頼というわけか!」

「ご名答ですっ!」


 俺は、合点して頷いた。

 つまり、パフェットは暗号解読スキルが使える普通の人というわけだ。

 心配して損をした。


「だから、俺も暗号解読スキルが使えたから、この暗号文を解くのを手伝えということ?」

「はいっ! その通りですっ!」


 パフェットは部屋の片隅にある、うず高く積まれた手紙を指差した。ということは、すべてこの手紙は暗号文ということになる。


「だから、ガーリックさんは私と一緒に、これらの暗号文を全て解読してくださいっ!」


 全体的に見ると、部屋の三分の一は手紙の山だった。


「……これ全部?」

「はいっ!」


 俺は、その存在感に思わず呻いたのだった。

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