第三話 俺、適当に命名される!?

 俺は、女に拝み倒した。


「何でもします! 何でもします! 何でもしますから!」


 という、必殺技を繰り出した。

 女はしばらく考えていたが、一つ頷いた。


「まあ、何でもしてくれるんなら衣食住保証してあげるですっ!」


 と、彼女は天使のスマイルを向けてきた。

 そういうわけで、俺は何とか助かりそうだ。


「ここですっ!」


 あれこれ考えているうちに、森を抜けたようだ。周りを見渡すと、景色が変わっていた。向こうに町並みが見える。


「絶景だな!」

「彼方が第三区域っ! 此方が第四区域っ! そして、ここ、手前が第五区域っ! 区域を区切るように周りを占めているのが暗号の森ですっ!」


 そして、連れは後ろを振り返った。レンガの家が、広い庭の中に建っていた。二階建てだろうか。窓がお洒落な家だ。


 そのまま、そのレンガの家を指さした。


「ここが、私の家ですっ! ここに住み込みで働いて頂きですっ!」

「ああ、よろしくな!」

「私は、パフェットですっ! 貴方の名前はなんと仰るんですかっ!」

「自己紹介がまだだったな! 俺の名前は……アレ?」


 面白いほどに俺の名前が思い出せなかった。まるで、あのクロスワードパズルの答えのように、誰かの人生に異世界転生したみたいだ。


「ええと。自分の名前が、思い出せないんだが……!」

「ふーんっ。じゃあ、私が適当に付けますねっ!」


 て、適当。適当に付けられるのか。ワンコの名前だって真剣に考える昨今にか。


「んーっ。じゃあ、ガーリック《Garlic》なんてどうですかっ?」

「なんだ。適当につけた割には良い名前だな! アミュレットみたいな感じで!」


 この女のことだから、物凄く適当な名前を付けてくると思ったが、意外と良い名前で拍子抜けしてしまった。


「パッと思い浮かんだ名前なんですっ! 私、天才かもしれないですっ!」

「めっちゃしっくり来たよ! 良い名前だよ! 気に入ったよ!」

「そうでしょ、良い名前ですよねっ? じゃあ、ガーリックで決定ですっ!」


 パフェットに一発で決められて、俺は今日からガーリックになったのだった。

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