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で、結局こうなるのだ。
「でね、商店街の南口の近くに新しいお店が出来て、って聞いてる?」
「聞いてる聞いてる」
結局バカ力には敵わなくて、勝手口を施錠してミケの店で酒を飲んでいる。あーあ、ドラマは明日観るか。
「でね、そこに入った子がすっごく好みなのよ」
「へー」
「ちょっとは興味持ってよ」
「持ってる持ってる」
世界中のビールを扱う居酒屋ってのにはすごく興味を持っているとも。今度絶対に行こう。
「恋のキューピットでしょ、今度はあたしの胸に矢を放ってよ」
「え? 今すぐに眠りたいって?」
「そっちじゃねーよ」
俺がその異名に気付いたのはここ半年くらいのことだ。その日初めて訪れた客に突然そう呼ばれた。
「キューピットのバーテンさんですよね!? 相談があるんですけど!」
詳しく話を訊くと、大学の同じサークルの先輩が俺のアドバイスで恋が成就したらしい。しかも二人も。正直それが誰なのか思い当たる人が多くて分からないが、いつしかその子達のまわりでは俺は“キューピットのバーテンさん”と呼ばれているらしく、この界隈でうすーく広まっているらしい。すごく恥ずかしい。そんなつもりないのに。
「それじゃあキューピットからの有り難い言葉を授けよう」
「キューピットって神様の使いじゃなかったっけ?」
「恋とはそんなに急いでするものではない~」
「あー、はい」
「焦る必要はない。良い人かどうか、ちゃんと見極めるのじゃ~」
「はい」
「その為にはキューピットと共に気になる相手の店へ行くのじゃ~もちろん貴様のおごりで~」
「神様は貴様なんて言わないわよ!」
「貴様の金でじゃぁ~」
ミケが本気なのかは分からないけど、気になる店に行けるのならバッチコイだ。
え? それがキューピットのすることかって? 残念、俺はただのバーテンなんで。
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