第23話
話は今に戻るが。
つまり、咲が。
邪魔なモノ
の説得で涙を流すなど絶対にあり得ない。
筈だったのだが。
「.....咲ちゃんは.....絶対に変われると確信したよ。私」
「.....」
暖かい缶コーヒーを持って。
俺は黒々としている中身を見ながら。
お茶を飲んでいる、凛の話を聞いていた。
此処は総合病院の外である。
正面玄関のその外の売店の横の椅子に。
俺達は居た。
「ゆーちゃん。咲ちゃんは確かに人の道から外れている。でも.....涙は決して嘘をつかないよ。うん」
「.....そうなのか?」
昔の事を思い出しつつ。
俺は凛に向いた。
凛はニッコリして俺に向く。
「そう。だって私、本当にいっぱいの兄妹という人間を見てきて育ったんだから!」
「.....そうだと良いがな」
「あー!ゆーちゃん私の事、信頼してないんだー。ふーん!!!!!」
ほっぺたに空気を詰め込んで。
リスになった様な感じで腕を組み。
横を向く。
俺はその様子を苦笑しながら見て。
いや。
そんな事は無い。
凛の言葉に間違いはない。
今までがそうだったからな。
と、心の中で思って居た。
そして缶コーヒーを飲み干し。
空き缶入れに捨てた。
それから手を叩いて俺は話す。
「で、どうするんだ。これから」
「.....簡単だよ。お姉ちゃんはね。とにかく進むよ!」
凛は鼻息を荒くして。
その様に話した。
全く。
こいつを彼女に迎え入れた俺は。
本当に運が良いんだな。
その様に思いつつ、真正面を向く。
車椅子に乗った女の子が此方に近づいてきていた。
って。
陽子じゃねーか。
「悠次郎くーん。熱々な感じですなー?此処まで分かるぐらいの湯気が見えましたぞー?」
「.....そんな訳あるかい。.....って言うか、お前、大丈夫なのか?」
「.....うん?あ、私は大丈夫ー。咲ちゃんよりかは傷が浅かったみたいだからねー」
陽子は顎に手を添えて。
目を光らせる様にして居た。
そんな様子を凛は笑顔で見つめて居て。
そして何かを思いついた様に。
手を叩いた。
「.....あの!陽子ちゃん。協力してほしい事が有るんだけど。一緒に協力してくれない?」
「へ?」
「はい?」
元気アピールのつもりか。
手を握られて。
ブンブン陽子に縦に振られていた、俺。
更に陽子も。
俺達は顔を見合わせて。
目をパチクリした。
☆
「.....ってな訳でさ、お前にも協力してくれ」
『うん!悠次郎くんの為なら!』
正面玄関の公衆電話ボックスの中。
そこでスマホで連絡をする。
その連絡先。
それは、西町だ。
西町春。
連絡先を交換していたのだ。
俺はそんな春に初めて連絡をし。
春は簡単に頷いてくれた。
「.....じゃあさ、この街のイドンショッピングモール。あそこで待ち合わせな」
『うん。とっても楽しみ!』
「有難うな。.....じゃあ」
俺のヤンデレの妹を改心させる為に。
動き出したとは言えなかった。
俺は少し複雑な心境で。
スマホを切る。
そして、公衆電話ボックスを出て直ぐの椅子に座って話していた陽子と凛に。
声を掛けた。
「これで良いのか?」
「.....うん。オーケーだよ」
「で、それはそうと、凛さん。.....何をするの?」
そう言えばまだどうするか曖昧だった。
俺は答えを求めて、凛を見る。
その凛は。
笑顔で、フッフッフと言って話す。
「名ずけて、咲ちゃんか弱い乙女変身作戦!だよ!」
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