第21話
運動会の当日は休む事になった。
その次の日から俺と咲は何百メートルしか違わない、近所の県立小学校に転校する事になり。
俺は小学校を暫く休む事になった。
だが。
何かがおかしくなっていく。
咲がトイレに長く篭ったりする事が多くなった。
その全ては絶望の始まりだったのを。
今でも覚えている。
「お兄ちゃん。もう大丈夫だからね♡」
「.....は?」
形勢逆転と言わんばかりに。
俺は転校した事はしたが、それでも念の為、しばらく休む事になった為。
自室で漫画を読んで、ゆっくり休んでいると。
ニコニコ笑顔の咲が何時もの通り、早退して帰って来た。
その顔は。
これまで見た事の無い、笑顔だったのを記憶している。
思えば。
これが、最初の咲のヤンデレだったのかも知れない。
☆
翌日のニュース。
俺が前居た、小学校で。
教師が理科準備室にて発見したもの。
俺の元担任。
裸でガムテープで縛られて、性器、身体中、顔中に思いっきりに塩酸がかけられていて、溶けている姿だった。
死んでは無かったが、気を失って居たそうだ。
激痛で気絶したのだろう。
厳重に保管されている筈の塩酸。
それが何故、表に出て。
俺の元担任の身体中にかけられていたのか。
そして何故裸なのか。
俺はこの時、知る由も無かった。
この裏には、恐ろしい真実が有った事を。
☆
咲がトイレに30分程篭ったりする事が多くなったその頃。
代わり番こで俺に小学校の授業を教えに来ていた、先生から聞いた噂だったが。
咲はよくトイレじゃ無い場所にも行っていた様で。
まぁ、小学生なんだからそういう事もあるか。
と思っていたが。
俺は発見した。
そのメモを。
咲の部屋の、咲に貸した漫画を取り返そうと入って。
「.....何だこれ」
たまに親の携帯で咲は暇つぶしに遊んでいた。
そこで検索して書き記したものか。
とんでもない事が書かれていた。
塩酸、硫酸、王水。
そんな事が紙に書き記してあった。
更に、人を殺すには。
などとも書かれていて。
「.....まさか。いや、それは無いよな?」
小学生ながらも。
その頭脳は中学生並みに頭が良い、咲。
つまり。
いや、まさかな。
俺は引き攣った笑みを浮かべ、戻す。
そして静かに咲の部屋から退出して、自室に戻った。
☆
小学生が1人や2人、増えた所で。
俺の小学校はアバウトだった為、教師が偶然に会ってもまるで気にしなかったのが運の尽きか。
その小学校では事件は頻繁に起こり始めた。
そう。
あくまで、ニュースになるほどの大事件が。
まず第一の事件は教師。
そして、第二の事件。
「.....嘘だろ」
俺はテレビで偶然見たが。
視聴覚室。
そこで、小学生が一名、命を落とした。
その名前は。
五十嵐権太
つまり、柔道部に所属していた、俺のイジメっ子だった奴だ。
何度も鈍器の様なもので殴打され。
頭蓋骨は粉々になり。
耳からも出血し。
脳挫傷で死んで居たのを別の生徒が発見したそうだ。
何であんな怪物が。
死んだのだ。
俺はゾッとして。
漫画を落とす。
その背後から聞こえた。
ランドセルに付けた、鈴の音。
つまり、俺の妹が帰って来た合図を。
ギィ.....。
「お兄ちゃん!ただいま!」
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