第21話

運動会の当日は休む事になった。

その次の日から俺と咲は何百メートルしか違わない、近所の県立小学校に転校する事になり。

俺は小学校を暫く休む事になった。

だが。

何かがおかしくなっていく。

咲がトイレに長く篭ったりする事が多くなった。

その全ては絶望の始まりだったのを。

今でも覚えている。


「お兄ちゃん。もう大丈夫だからね♡」


「.....は?」


形勢逆転と言わんばかりに。

俺は転校した事はしたが、それでも念の為、しばらく休む事になった為。

自室で漫画を読んで、ゆっくり休んでいると。

ニコニコ笑顔の咲が何時もの通り、早退して帰って来た。

その顔は。

これまで見た事の無い、笑顔だったのを記憶している。

思えば。

これが、最初の咲のヤンデレだったのかも知れない。



翌日のニュース。

俺が前居た、小学校で。

教師が理科準備室にて発見したもの。

俺の元担任。

裸でガムテープで縛られて、性器、身体中、顔中に思いっきりに塩酸がかけられていて、溶けている姿だった。

死んでは無かったが、気を失って居たそうだ。

激痛で気絶したのだろう。

厳重に保管されている筈の塩酸。

それが何故、表に出て。

俺の元担任の身体中にかけられていたのか。

そして何故裸なのか。

俺はこの時、知る由も無かった。

この裏には、恐ろしい真実が有った事を。



咲がトイレに30分程篭ったりする事が多くなったその頃。

代わり番こで俺に小学校の授業を教えに来ていた、先生から聞いた噂だったが。

咲はよくトイレじゃ無い場所にも行っていた様で。

まぁ、小学生なんだからそういう事もあるか。

と思っていたが。

俺は発見した。

そのメモを。

咲の部屋の、咲に貸した漫画を取り返そうと入って。


「.....何だこれ」


たまに親の携帯で咲は暇つぶしに遊んでいた。

そこで検索して書き記したものか。

とんでもない事が書かれていた。

塩酸、硫酸、王水。

そんな事が紙に書き記してあった。

更に、人を殺すには。

などとも書かれていて。


「.....まさか。いや、それは無いよな?」


小学生ながらも。

その頭脳は中学生並みに頭が良い、咲。

つまり。

いや、まさかな。

俺は引き攣った笑みを浮かべ、戻す。

そして静かに咲の部屋から退出して、自室に戻った。



小学生が1人や2人、増えた所で。

俺の小学校はアバウトだった為、教師が偶然に会ってもまるで気にしなかったのが運の尽きか。

その小学校では事件は頻繁に起こり始めた。

そう。

あくまで、ニュースになるほどの大事件が。

まず第一の事件は教師。

そして、第二の事件。


「.....嘘だろ」


俺はテレビで偶然見たが。

視聴覚室。

そこで、小学生が一名、命を落とした。

その名前は。


五十嵐権太


つまり、柔道部に所属していた、俺のイジメっ子だった奴だ。

何度も鈍器の様なもので殴打され。

頭蓋骨は粉々になり。

耳からも出血し。

脳挫傷で死んで居たのを別の生徒が発見したそうだ。

何であんな怪物が。

死んだのだ。

俺はゾッとして。

漫画を落とす。

その背後から聞こえた。

ランドセルに付けた、鈴の音。

つまり、俺の妹が帰って来た合図を。


ギィ.....。


「お兄ちゃん!ただいま!」










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