第19話

三島咲。

そんな俺の妹は昔は。

ヤンデレブラコンでは無かった。

普通の可愛い女の子だったと思う。

だが、ある日。

それは今から7年前の。

10月21日の話だ。

俺の小学校の運動会の日だ。

全てが変わってしまった。



運動会の前日の日の事。


「ねぇ!お母さん!明日はお兄ちゃんの運動会の日だよね?応援に行きたいなー!」


「駄目よー。そうしたいかも知れないけど、貴方は身体が弱いでしょ?」


母親はその様に話しながら。

咲の部屋の埃をくまなく掃除して居た。

俺はそれを手伝って居たと思う。

そうしなければいけない理由があった。

咲が埃で喘息を起こしたら大変だという理由が、だ。


「まぁ、自宅で応援して居てくれ。な?咲」


「むー。私も運動会に参加したかったな。お兄ちゃんと一緒に」


確か、俺はこの時。

苦笑して居た。

信じられないかも知れないが咲は小学生の時、滅茶苦茶に身体が弱かった。

何時も風邪を拗らせ。

そして、心臓に病原菌が入り、倒れたり。

インフルエンザ脳症になったり。

とてもじゃ無いけど、小学校に行ける様な状態では無かった。

その為。

何時も咲は自室で療養の為、籠ってばかりだった。

だけど、咲はそんな身体でも何時もニコニコで。

誰もを慈愛に満ちた笑顔で、笑顔にしていた。


「咲ちゃん。こんにちは」


「こんにちは!」


そんな咲の元には学校の先生がやって来ては、個別授業を行ったりし。

咲は本当に有意義な楽しい日常を過ごして居たと思う。

俺はそんな慈愛に満ちた咲が大好きだった。

自慢の妹として、誇って居たのだ。

運動会も頑張ってやろう。

その様に、嫌々ながら思って居た。

何故、嫌々なのか。

それは。



「おい。三島」


「.....な.....何?」


俺は小学校時代。

体を鍛えていて、警察の技を学んでいる訳じゃ無かった。

妹のお世話で忙しく、とてもじゃ無いけど、そんな事をしている暇は無かったのだ。

その為。

俺はメンタルも弱く。

か弱かった。

更には、父親が公務員という事で。

俺は金持ちだろう。

その様に誤った感じで認識され。

何時も何時も、金銭をいじめっ子に要求されていた。

いじめっ子は柔道部の奴で。

図体がでかく、力も強く。

とてもじゃないが、逆らえなかった。


「金貸てくんね?俺ら、ゆうじおうカード買いたいから」


「.....そんな.....お金なんか無いよ.....」


俺は拒否する。

その事に相手のいじめっ子は怒りを露わにしていた。


「ああ?じゃあ、お母さんの財布からお金盗んでこいよ!出来るだろ!それぐらい!」


「.....」


涙を流しながら。

俺は脅しを受けていた。

だが、誰も助けてはくれない。

何故なら。

そいつが怖いからだ。

更には言えば、俺は小学校時代。



「君ね。なんで何時も佐藤くんにお金あげているの?」


「.....すいません」


俺は職員室の休憩室に何時も呼び出され。

一対一で男の担任に小突かれて、怒られていた。

その理由としては、俺の存在がウザかったからだと思う。


公務員の給料は小学校の先生よりも高い。

それも、何もしなくても入ってくる時がある。

その様な誤解された認識。


更にいじめっ子が俺から巻き上げた金で購入した物を小学校に持ってきていて、その件で芋ずる式に俺を呼び出す事になる。


その全ては逆恨みの様なもんだった。

今思えば、それで小学生の俺に罵声を浴びせて八つ当たりして。

モヤモヤを解決していたのだろう。


「君さ、少しはこっちの身にもなってくれない?こっちだって生徒を毎回呼び出して。とても面倒で困っているんだけどね。こっちだって忙しいんだよ?本当に。こんな生徒を持って不憫だねー。俺も」


苛立っていた担任。

だけど、俺の身にそんな事が有りながらも。

この事で俺は家族を恨んだり、相談したりは決してしなかった。

何故なら、親には咲の介抱で、仕事で、心に余裕が無い事を知っていたのだ。

それに、話したらどうなるか分からなかったから。

メンタルが弱かったから、そんなストレスに耐えれなかった。

咲にも、兄の建前を守る為に。

小学校から帰ったら笑顔で会話して、隠していた。

そんな弱い咲が。

全てを変える程のヤンデレブラコンの妹になるとは。

この時、一切考えてなかった。












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