第17話

数日が経ち。

春樹の処遇の件について、マスコミに対して大学側は謝罪会見などを行った。

担当教官の山口も真剣な顔付きで同席して居る。

怒りも有るだろうが、まぁ、どうせ居なくなって良かったとも思って居るのだろう。

山口はそう言う奴だしな。


「.....と言うか、本当に大丈夫なの?ゆーちゃん」


「.....怪我とか精神とかは大丈夫っちゃ大丈夫だが、人間不信になりそう.....ではあるな」


アパートの俺の部屋。

俺は凛と見合わせて事件の事などを話していた。

今現在、悩みを相談出来る奴は親以外なら俺の家族の凛ぐらいしか居ない。

春樹は捕まった。

咲は入院した。

陽子も居ない。

家族は遠いし。

もっと知り合いを作るべきだと俺は実感した。

だけど、知り合いを作ったら裏切られる可能性も今回、感じたしな。

どうしたもんか。


「ゆーちゃんが死んだら私も死ぬからね」


「.....冗談はよせ。お前が棺桶に入って居る所なんて見たくない」


「一緒の棺桶に入るんだから仕方がないよ」


凛はその様に話して。

そしてそのまま笑顔を見せる。

俺はその顔を見てから。

溜め息を吐き出した。

その時だ。

俺の右ポケットに入っている、スマホが震えた。


プルルル


「.....電話か。凛。すまん」


「良いよ。大丈夫」


凛の許可を得て。

俺はスマホを取り出した。

スマホは。

前にバイト費用を貯めて買ったiPh●ne6だ。

今時、i●hone6を持っている奴は少なかろうが。

考えながら画面を見て着信履歴を見る。

そこには、何故か。

何故か。


「.....何で.....咲の名前が.....」


俺は見開いてゾッとした。

スマホを持つ手が結構震える。

オイオイ。

結構、ナイスタイミングじゃないか。

まさかな。

いや、まさかな。

俺は大きく息を吸って。

そして吐いた。


「.....もしもし?」


『オニイチャン?私以外の女の子を部屋には連れ込むなってあれ程.....』


冷徹極まる声。

咲の声ではあるが。

元気を証明する様な声では無い。

ある意味、脅しにかかっている、ヤンデレモードが起動した、咲の声。

俺は画面をまた見た。

そして再び、通話口に声を放つ。


「ちょ。お前!どういう事だ!何故だ?病院に入院しているのに!」


『うん。念の為に通販で購入したんだよ。盗聴器。今ね、結構簡単にネットって色々なモノが買えるんだよ?麻薬とかそういうのも』


「.....盗聴器だ!?いやいや!あのな!兄の部屋を何だと思って.....」


俺は怒る。

だが、途中で。

死んだ様な声で怒りの声が掻き消された。


『そんな事はどうでも良い。オニイチャン。何でまたあの女を私達の愛の巣に連れ込んでいるのか。.....答えて♡』


「凛は.....いや.....相談に乗ってもらっているだけだぞ!マジで!」


俺は冷や汗をかいて。

唇を舐める。

その時だ。

凛が徐に立ち上がるなり俺のスマホを奪い取った。

そして笑顔で柔和に話す。


「咲ちゃん。凛です」


『.....は?何?オニイチャンと話しているんだけど?代われ』


「それは出来ないよ。聞いていれば、部屋に盗聴器って何?勝手にそんな事をして良いの?良いわけ無いよね?咲ちゃん。謝りなさい。悠次郎くんに』


何人も弟や妹が居る家庭で育ったという凛は、笑顔のまま。

静かに怒りながら咲と会話する。

だが、咲は全く取り合う気は無さそうであった。

まぁ、そうだろうけど。


『オニイチャンに代われ。コラ。.....あんたに用はないから』


「うーん。良い機会だから教えてあげるね。私に脅しは通用しないよ。私ね。結構強いんだよ?メンタル。まぁ、咲ちゃんに殺されかけた時は流石に動揺したけど」


『話、聞いてる?あんた。また殺すよ?』


凛の説得。

しかし、全く咲は聞いてない。

って言うか。

もう咲はかなり暴走している様だ。

どう結末に持って行った方が良いんだ?これ。

俺は苦笑しながら考える。

すると、凛がとんでもない事を話し出した。


「咲ちゃん。いつまで子供みたいな真似をするの?良い加減、社会に出れる様な大人になりなさい。お兄さんを愛したら駄目だよ?兄妹は愛し合ったら駄目なんだよ」


『..........コロス』


ヤバい。

小さな死神の呟き。

咲がキレたみたいだ。

俺は青ざめながら凛の肩を掴む。


「おい!凛!挑発し過ぎだ!今度こそマジでお前、殺されるぞ!」


「.....それじゃ駄目なんだよ。ゆーちゃん。だいたい、平気で殺すとかお兄ちゃんを好きとか監視していたいとか言っている子供は.....変わらないといけないよ。だから.....ゆーちゃん。私、決めた」


耳に再び、スマホを当てる、凛。

そして真剣な顔付きで話を始めた。

俺はクエスチョンマークを浮かべて見開く。


「咲ちゃん。.....私、咲ちゃんの教育の為にお姉ちゃんになる」






























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