第12話

「.....何だこれは.....!」


何だ。

一体、何が起こっているのかさっぱり分からない。

下村のラ●ンのこのメッセージは何だ。

何かを感じる。

俺の中で、警告音が鳴っている。

思っていると、陽子が反応を見せた。


「.....ラインに返信しても返事が無いってー.....何か気になるねー.....」


顎に手を添えて。

ラ●ンの主を心配している。

咲は.....女だと知って口を聞いてくれない。

まぁ、それは何時もの通りだ。

後で何とかするとして。

また父さん頼みか?これは。

万が一、下村が連れ去られ.....るなんて有り得るか?


「.....いや.....ちょっと待て.....」


万が一。

これは万が一の話だが。

下村の彼氏が暴走しているのなら。

話が変わってくるだろう。

そう。

咲の様な。

またはりんの様な。

怪物.....じゃ無くて、まぁ、そういう奴らもこの世には居る。

この世界にはそういう人格もあってはおかしく無いかも知れない。

だとするなら。

本気でこりゃ警察頼みだな。

そうなると、先ずは何処に居る。

そういう事になるが。


ピロリン


「.....あ?」


「.....あ、またメッセージだねー.....って」


ラ●ン。

そこに記されていた、いや。

掲載されていた写真だけのメッセージ。

それは。

余りにも酷なものだった。


「.....巫山戯てやがる.....」


上半身が剥き出しで、腕を柱に縛られている、下村。

俺は激昂の意味で眉根を寄せた。

仮にも同級生だった奴を何だと思って居る。

もう確定だな。

此処まできたら彼氏としか思えない。

だが、情報が足りない。

何処だよ此処。

マジで。


「.....此処ってホームセンターじゃ無いー?私、以前、バイトしてたよー.....?」


あ、ホームセンター?

何処のホームセンターだ.....って。

まさか。

そのまさかと言わんばかりに。

咲が見てくる。


「まさか.....あそこだよね?お兄ちゃんがさっき行った.....ホームセンター」


「.....あそこはまだ開いているだろ。こんな事をしたら即刻バレるだろ」


いや。

と、陽子が顎に手を添えたまま、話した。

そして、俺の瞳を真剣な眼差しで見てくる。


「あそこのホームセンターって閉店時間が短いんだよね。今は17時。つまり.....」


「誰も来ない場所で.....ってか?」


なんてこった。

このままだと下村の命が!

俺は上着を持って、そのまま外に飛び出そうとした、その時。


「待ってー。私も行くよー」


「馬鹿か。危なすぎるぞ」


だが、その言葉に。

陽子はえっへんと胸を張った。

無い胸を。


「余計な事は想像しないよー?」


半目で睨みを聞かせる。

って、おい。

咲よ、お前何か教えたろ此奴に。

何で俺の心を読めるんだ。


「私も行く」


「.....いやいや!人数が多くなればなるほど危ないだろ!」


それに忍び込んだら警察沙汰だし。

危険は俺1人で十分だ。

だが、咲は。

半目で俺を見てきた。


「お兄ちゃん?嘘吐いたよね.....?オニイチャン.....?」


「すいませんでした」


怖いんだって。

その目が。

その死んだような目付きがよ!

俺はため息を吐いて。

そして現在の状況を確認した。

部屋は片付いた。

陽子は私服になっている。

まぁ。

もうこれなら忍び込んでも問題無いか。

恐らくだが。


「.....なら。陽子。何処から入れるか教えてくれ」


「従業員入口が改装されて無かったらあそこがボロいからねー。彼処から犯人とかそういうのは侵入したんじゃ無いかなー?」


「そうなんだ」


決まりだな。

従業員入り口から一点突破だ。

そして陽子を救い出す。

巫山戯た野郎に鉄槌を下してやる。

許さねぇ!



思えばあの写真は挑発だな。

俺に対しての。

走りながら、その様に歯を食い縛って思った。

父さんに連絡して。

住宅街を思いっきり走り抜けて。

そして着いた。

夕焼けの元、カラスが悲鳴の様な鳴き声をあげる、さっきとは打って変わった不気味すぎるホームセンターの従業員入り口に、だ。


「.....此処か.....」


車も出払って。

そしてシャッターは閉まり。

人が居る気配は全くしないで。

トラックや機材だけが人が居た事を証明して居る様な感じであった。

側の巨大な門には、警備員室には。

誰も居ない様だ。

だが。


「.....従業員室のみ光が有るな.....」


俺は訝しげな目付きをした。

成る程ね。

彼処に誰かが居るな。

下村が居るとは限らないが。


「.....こっちだよー」


陽子は小声で。

閉鎖されている門をよじ登って居た。

いやいや陽子、結構、派手に行くじゃねーの。

お前さんよ。

俺は苦笑する。

その横を、誰かが通り過ぎた。


「行くよ。お兄ちゃん。何だかこういうのワクワクする!女はどうだって良いけど、忍び込むなんて!」


いや、楽しそうだな。

お前、咲。

俺は更に苦笑した。

ため息交じりに俺も門をよじ登る。



ギィ


「.....此処だねー」


古臭い、決して軽くは無い鉄の扉を陽子は押して開け放つ。

長い廊下で端に扉が幾つも有る、従業員室らへんに忍び込めた様だ。


「侵入するだけで鳴る筈の頑丈なセキュリティーが切られてるねー。.....この場所に誰かがいる事は間違いないねー」


「.....そうなんだ」


俺は静かに。

眉根を寄せた。

そして皆んなに顔を合わせて。

頷いた。


「行くか.....」





























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