第11話

りんが捕まった。

まぁ、だからと言って。

これでバイトが決まったわけじゃ無い。

俺のバイト先はどうなるのやら。

何か、バイトのお悩み相談室でも無いのかね。

この辺りには。

しかも。


「部屋が消火器の粉まみれ、荒れているとか.....」


「.....うーん」


咲と2人。

首を捻っていた。

この部屋の惨状をどうしたものかと思って。

とりあえず、ドア、窓は開けた。

風通しを良くしたのだが。

困った事に、消火器の粉は質量が重いのか何なのか。

全く外に飛んでいかない。

困った。

マジで困る。

このままだと生活が出来ん。


「.....どうする?お兄ちゃん」


「どうするったって.....」


思っていると。

ドアの先からやたら元気な声がした。


「はいー。陽子だよー。って、どうしたのー?これー?」


「げっ。陽子.....」


高校の制服を着ている。

今帰ってきたものと思われるが。

非常にマズイ。

この状況を何だと思うのか。

此奴。


「.....」


「.....」


陽子は。

口角を上げた。

そして手をわきわきさせてくる。

何だ。


「お金くれるなら掃除してあげても良いよー?」


「言うと思ったぜ。コンチクショウ」


俺は思いっきり苦笑する。

すると。

咲が睨みを効かせて。

俺の袖をグッと掴んできた。

冷や汗をかく。


「オニイチャン.....?」


「はい。すいません」


ヤンデレ。

完全に忘れていたが、此奴にはそれがあった。

危ねえ。

此奴、俺でも殺しかけるしな。

容赦無いし。


「.....あんたなんかに頼む必要性は無い」


「ふーん。そうかなぁー?私は必要だと思うよー?じゃ無いと君達をこのままだと追い出す必要も有るからねー?」


陽子の言葉に間違いは無い。

まぁ、確かに。

大家に見つかったらマジでマズイだろうな。

これ。

家具も滅茶苦茶、部屋は汚い。

最悪の状況だ。


「仕方が無い。陽子。咲。お前ら協力してくれ。俺はちょっと買ってくるもんがある。.....賃金は払う」


「な!?お兄ちゃん!?此奴なんかと!?」


咲は嫌そうな顔をする。

お前の更生も兼ねてだぞ。

仲良くしろ。


「宜しくねー?咲ちゃんー?」


「.....」


汚物を吐き出すように、陽子を睨む、咲。

俺はそんな様子を眺めて。

改めて苦笑した。

しかし、慣れは必要だ。

こういうのは大事だろう。



「取り敢えずはホームセンターで掃除道具を買うか.....」


近所には。

巨大なグデイが有る。

それはホームセンターだ。

基本的に安い品物が揃っていて。

俺的には助かっている。


「.....陽子と咲の手助けになればなぁ.....。良いんだけど.....」


とは言え。

マジであの部屋の惨状は業者でも呼ばんと、どうにもならん様な気がして。

うーむ。


ガー


「いらっしゃいませ.....あれ?」


「.....お前、何やってんの?」


ホームセンターに入り口から入って。

そこで作業をしている女性店員と鉢合わせた。

その店員は俺を訝しげに見て。

そして驚愕した。


「.....あれ?悠次郎くんやない?君」


バスト、ヒップ、小学生みたいな可愛い童顔、低い身長、アルビノの銀色の短い髪の毛、それなのに何故か、関西弁の様な口調。

それらがあまりにも構内でも有名だった、俺の高校時代の同級生。

所謂、幼女の様な女の子。

まさか、此奴と出会すとは。

持っていた荷物を置いて、嬉しそうに近寄って来る、下村まゆみ。


「下村?何やってんの?お前.....」


「んー。バイトやで?この近くの大学にうち、通っているんよ」


あ?この辺り?

此奴、確か東大目指すんやで!

とか叫んでいた様な気がするんだが。

そして東大に受かったんじゃ無かったっけ?

赤門ぶっ叩いて。


「お前。赤門はどうした?」


「あはは。似合わなかったんよ。あれ。あたしにはキツかった!で、転校したんよ」


マジか。

此奴、もの凄い金持ちだな。

俺は驚きつつ。

そんな下村に話した。


「ちょうど良いや。お前、掃除道具の売っている場所知らね?」


「あ、こっちやで?」


「あ、マジか」


下村はニコニコ笑顔で。

案内してくれた。

そう言えば、此奴。

同じ東大目指してた彼氏が居た筈だが。

どうしたんだ?



「はい。箒、雑巾。.....そんな感じでええの?」


「ああ。もうこれが無難だろ。考えても」


下村から受け取って。

そして俺は頭をボリボリ掻いた。

聞きづらいが、どうしても気になる。

いや、恋人が欲しい訳じゃ無いぞ。

既に凛が居るし。


「お前、彼氏は.....」


「.....あはは.....あんまりその話はせんどいてーな」


「?」


下村は。

俺の言葉に何だか悲しげに俯いた。

そんな様子に俺は首を傾げる。

何だ?


「.....おう。聞くなっつーなら聞かねぇ。すまん」


「ん」


下村は指をくるくる動かして。

そして、俺を見上げてきた。

にこやかな顔だ。


「どうした?」


「なぁ?ラ●ンの番号教えてーな」


「.....あ?.....ああ」


突然の言葉に、ドギマギしながらも。

そして咲を恐れながらも。

一応、通信用の番号を教えた。



「オニイチャン?何でこんなに遅いの?女?女?女?」


「怪しいー。悠次郎くんったら。彼女居るんでしょー?あーやーしーいー」


咲と陽子は汚れまみれで。

ってか、何でお前らそんな意気投合してんの。

帰ってきたら部屋はほとんど片付いてるし。

俺が愕然とする程に。


「女じゃねー。昔の知り合いだ」


「怪しいなー。悠次郎くんの側に来るのって大概、女の子だからー」


「そうだね。陽子ちゃん」


お前ら。

俺は額に手を当てる。

そしてため息をついた。

すると。


ピロリン


「.....ラ●ン?」


メッセージが入った。

俺は面倒臭げに口をへの字型にして開く。

そこに書いてあった、メッセージ。

それは。


「.....何だこれは.....」


(本文 テメー誰だ。まゆみに近づいて来る奴は誰1人として許さん。殺すぞ。まゆみとラ●ン交換なんて10000000000000000年早いわ。クソボケが。死ね)


「.....」


明らかにまゆみで無いと分かる。

あの優しいまゆみがこんな文章打つか?

信じられん。

何がどうなっている。


「何これ?お兄ちゃん?」


「.....知らん.....分からない」


咲と陽子は心配そうに見てくる。

とは言え。

回答のしようが無い。

こんな文章を送られてきても。

思っていると。


ピロリン


「?」


またラ●ンが入った。

さっきと同じ、まゆみから。

読んだ、本文に俺はゾッとした。


(本文 助けて)






































  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る