第4話

「.....こんな事をしてただで済むと思うなよ。お前.....咲.....」


「.....悠次郎!!!!!.....知り合いか.....?」


知り合いも何も。

俺の実妹、三島咲だ。

まさかこんな再会を果たすとは思ってもおらず。

最悪以外に言葉が見つからない。

愕然に思っていると、春樹が思いっきり叫んだ。


「.....とにかく手伝え!悠次郎!八つ裂きに.....ってか、凛が死んじまう!!!!!」


「無駄。だって、その鎖は頑丈にしてあるから。その女が精肉されるまで解けないよ?」


なん.....。

って。

馬鹿な事を言ってんじゃねーぞ。

この腐れアバズレが。

俺は咲を睨みながら、辺りを思いっきり照らす。

すると、カビだらけの床に斧があった。

多分、火災用の斧だと思われるが。

今はどうでもいい!


「春樹!斧があった!これ使え!」


「斧.....だ!?」


そして春樹に渡して。

俺は目の前の咲を見た。

咲は悲しそうに目を伏せて、泣いている。

瞳孔を見開いて。


「.....何で?お兄ちゃんは何で私を愛してくれないの.....?その女の方が大切なの.....?ねぇ何で?」


「.....すまないが.....お前が居ない間に全ては変わったんだ。俺はお前を愛する事は出来ない.....!」


まるで人形から涙じゃなくて、ただの水滴を流している様な咲に対して。

俺は冷や汗を流して構え、立ち向かう。

此奴は怪物すぎる。

最早、やっている事が人間じゃないと思う。

此奴がヤンデレだろうが、ヤンデレじゃ無かろうが。

最早、関係ない!


バキン!!!!!


「!」


「.....助けたぞ!悠次郎!そいつは放っておいて逃げようぜ!」


斧を投げ捨て、そして凛を背負っている、春樹。

助け出したその姿を見て、俺は涙を浮かべた。

だが、春樹の言っている事の実行は多分、かなり無理が有ると思う。

此奴は頭が良すぎて何をしでかしてくるか分からん。

そもそもに今の状況は春樹の身さえ危険が有るぐらいだ。


「.....」


「.....どうしたの?お兄ちゃん♡」


俺は唾を飲んだ。

そして目線を横にズラして。

暗闇を確認。

それからスマホのライトを一気に照らした!!!!!


「.....!!!!?」


一瞬の事態に目を瞑った、咲。

そして俺は振り返り、思いっきり叫んだ。

この声量なら、春樹に十分届く!


「走れ!!!!!春樹ィ!!!!!」


「了解!!!!!」


そして俺達は。

思いっきり走り出す。

だが、その際に。

足に何か引っかかった。


「.....何.....」


足元を確認する。

肉塊だ。

天井から何か降ってきて地面に叩きつけられた様だ。

正確に言えば、豚肉らしき物が。

腐っている。

いやいや、ご冗談を。

俺は天井を照らす。

そこには。


「何だよこれ.....」


豚肉らしきものがクレーンに無数に吊り下がっていた。

冗談じゃない。

吊り下がっているのは2階ぐらいのところだが、二階は腐って穴が空いている。

あの豚肉がもしクレーンから千切れて落ちてきた場合。

俺に当たったら頭の骨が折れるかなんかして重傷を負うだろ。

肉の重さ舐めんなよ!?


「.....クソッタレ!走れ!走ってくれ!春樹ィ!!!!!」


「分かった!ってか、死ぬなよ!?お前!」


当たり前だ。

こんな場所で死んでたまるかよ!

凛をそのままにして死ねるか!


「.....お兄ちゃん.....」


ドルルル


「.....咲.....」


これも計算の上ってか。

お前。

しかも何だそれ。

ずいぶん小型だが、チェーンソーか?

どっから持ってきた。


「お兄ちゃんの内臓を取り出して飾ろうかなぁ。そしたらお兄ちゃんは私だけを見てくれるよね!ね!お兄ちゃん!」


クソめ。

早く来い親父。

お前の息子が下手すりゃこんな醜い場所で死んじまうぞ。

いや、割とマジで。
























  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る