ジンセイ

「あと少し」 歯を食いしばって死なずにきた

少し光が見えかけている



潰しても潰してもまた走り出す

脚が二本のチャバネゴキブリ



どこ行きの船に乗ろうか?

行き先も帰る地もまだ分からないんだ



「憧れ」を「夢と野心」に書き換えて

わたしは二度とグラグラしない



助けてと言えばワタシは消えるから

涙封じた笑顔の鎧



思うまま来たつもり でも気が付けば

レールの上で守られていた



あと5ミリ ほんの5ミリで終われるのに

震えて止まったナイフが痛い



ダメだとかムリとか言っても それは嘘

マジでダメなら死ねるはずじゃん



何もかも壊すほどには

壊れてはいない人間わたしの中途半端さ



戦って戦い続けて生きるのは

負けてられない理由ワケがあるから



太陽ほど明るくもなく 月ほどに従順でもない

わたしは火星マルス



悲しみにきみ泣くといふ

われ泣くはただみじめさのゆゑにほかなし



愛と希望? そんなの背負って生きちゃいない

確かな野心とこころの剣だけ



「悲しくて泣いちゃう」程度の悲しみしか

知らないアンタが慰めないで



リセットもできないくすんだ現実で

このままゆっくり死んでいくのか



マボロシが絵筆と出会う一瞬の奇跡

かすんだ野望アシタが見えた



骨折のカサはコンビニに置き捨てて

泣いているのは空だけじゃない



今までは死なずにきただけ

生きてきたわけじゃないから夢も見ないよ



真実の言葉は鋭く痛いけど

破傷風にはならずにすむから



泣いたって変わりゃしないと笑ってきて

乾いた三日月 イヤだ ……今さら



手に入れた現実いまを愛して生きている

つるぎを秘めた瞳を上げた



苦しみを分かてるなんて思わない

分けたいなんて思えるはずない



進んでも進んでも 道は続いてて

今やめたんじゃ後味悪いね



世に生を受けたからには義務がある

生きていかなきゃならないって義務



生きていくことを権利と言うならば

権利放棄は自由意志でしょ?



疲れたよ

飲んで酔えない毎日を それでも断つに断ち切れなくて



空っぽの月もゆっくり満ちていく

見上げた星が笑って言った



手加減を知らぬつるぎの生き様は

今ぞ ようよう問われつつある



鍵穴にカチリ手ごたえ この鍵だ

ぼくらはそれを運命と呼ぶ



安全なバスに乗り込むリコウモノ

見てろ 臆病者チキンは今に飛び立つ



***



卯月さま作『【短歌集】ゆうしゃのぼうけん』にインスパイアされて

https://kakuyomu.jp/works/1177354054881621969



共感はしない

お安い「わかるよ」は君の棘からヒカリを奪う



たからばこ あけられないのがたくさんで

さいごのカギはみつからないまま



十七の鉛のブレザー

本音なら筆箱の中、詠み人知らず



あきらめてひらきなおって

闇よりも怖い朝日を浴びてみようか

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