普通

おさく

普通

「みなさんそれぞれ行きたい高校を考えておいてください。ちなみにその志望校調査シートは11日に集めますので提出よろしくおねがいします。それじゃあまた明日」


 生徒たちは別れの挨拶を口々に叫び教室の外へと出ていく。マサトとミキオは志望校調査シートを見て話をしている。


「おまえ北高なんやろ?何科にするん?」


「おれ普通科にするつもりやけど」


「え!普通科!?マジか」


「なんねんて」


「いや普通科ってめっちゃ大変やぞ。うちの兄ちゃん去年普通科行ってんけど、ほんと大変そうやわ」


「ああトシオくんてそうやったっけ」


「そうねん。おれ、それ見とるからちょっと普通科嫌やなあ思っとってん。てかそうや、もしよかったら今日うち来ん?兄ちゃんに普通科もそうやけど高校のこといろいろ教えてもらわん?」


「ほんとに?んじゃお邪魔しよっかな」


 


 マサトとミキオ、ミキオの家の中にいる。二階に上がり、部屋の扉をノックするミキオ。


「兄ちゃん、入っていい?」


「おお、入れよ」


 中から声がした。トシオくんと会うのなんていつぶりだろう。ぼくとミキオは幼なじみだ。そのためミキオの兄であるトシオくんとも子どものときはとても仲がよく、その頃はしょっちゅうこの家に遊びに来ていた。


 マサトとミキオが扉を開けると、そこには椅子に座っているトシオがいる。


「こんちわ。ひさしぶり」


「おおマサトじゃないか。久しぶりだなあ。元気だったか」


「うんトシオくんこそ元気そうで何よりやわ」


「で、今日はどうしたんだ?」


 ミキオが口を開く。


「今日ちょっとお願いがあるんやってね。高校んこと教えてや。今志望校調査シート書かんなんのやってね。あとマサト、普通科行くらしいから普通科んことも兄ちゃんに聞けたらって思って」


「普通科ね。マサトは普通科に行きたいんだね」


「そうねん。実際どうなん?」


「普通科は大変だよ。すなわちいかに普通であるかを勉強する場所が普通科なんだからね。ほら、ぼくの服見てごらん」


「ユニクロ」


「そう。ユニクロなんだ。なぜなら普通科だからなんだよね。ユニクロってほら何だか普通って感じがするだろう?それにこの部屋を見回してみて何か気づかないかい?」


「え?なんやろ」


「気づかないかい?この家具の配置」


「な。のび太の部屋やこれ」


「ははは。そう。よくわかったね。この部屋はドラえもんののび太の部屋とまったく同じ配置なんだよ。普通っぽいだろ」


「そういえばトシオくんの喋り方も、もしかして」


「ようやく気がついたか。そうさ。そういうことさ。だんだんと普通科が分かってきたみたいだね。実際の学校はこんなもんじゃないからね。ほんっとに普通なんだよ」

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