3

 眺める。街はとても小さくこの目に映る。

 いや、違う。遠いだけだ。縦に。縦に遠いだけ。

 ここが、私の立つこの場所が遠いほどに高いだけ。

 ここからなら一発だ。落ちるまでの数秒の孤独に耐えたら。すぐに平穏が私を迎えに来てくれるのだ。


 深呼吸。

 さぁ。さぁ。さぁ。


 ぐん。


 と。髪の毛が、頭と接してる部分が悲鳴を上げた。


「誰の許可?」

「、ぁ、」

「いいかい?君はまだ『いい』って言われてないでしょ?覚えておいて?」

「うぅ……」

「返事」

「……はい……」


 掴まれていた髪が解放されたのは、エレベーターで下界まで降りた時だった。……頭皮がヒリヒリしたけど、この痛みもまた捨て難いように思えた。

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