どちらにしても死ぬのでせう

1

 ヂギヂギヂギ……ヂギヂギヂギ……


 カッターの刃を出し入れする音。

 とても心地よい音。


 音を響かせながら、呼吸をあと3つ。


 ひとーつ。ヂギヂギ。


 ふたーつ。ヂギヂギ。


 みーっつ。ヂギ。


 持っていたカッターを振りかぶる。


 待っていた痛みはやって来ない。代わりに振りかぶったはずの右手が固定されている。

 見上げるとあなたが微笑んだまま私の右手を掴んでいる。


「あ」

「なにしてるの」

「これは、その、」


 スッと手から抜けていくカッター。


「だめでしょ」

「ちょっとのつもりでした、よ?」

「だめ」


 その微笑みは恐ろしく冷たい。


「殺してあげるって言ってるでしょ」

「……はい」


 私はその日を夢見て待っている。

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