第6話
家の端末には明日会う予定の自然出産児のデータが送られてきていた。
〈ガム・ゴールド〉
男性、第一次58歳、第二局東エリア在住
「おはようございます。制服は着用していますか?さぁ出発しましょう。」
初めて迎えに来てくれた日と同じ調子でカンナミが来てくれた。僕達はカンナミの機体に乗り込むと第二局を目指した。
「仕事はどうですか。」
機内でカンナミに話しかけられる。
「大分慣れてきたよ。あれはクローリアがプログラムしたのかな。すごく使いやすい。」
「直接聞いたことはありませんが、第三情報局の情報戦は昔から局長が管理しているのでそうかもしれませんね。」
前でカンナミが微笑んでいるのが分かった。窓の外には緑が広がっている。第三局周辺はほとんどが地下施設なので地上には植物が自生していた。
しかし、第二局に近付くにつれて高い建物が目立ってきた。途中僕達は飛行機から車に乗り換える。
「場所は私のカードに読み込んであります。」
乗り換えた車にカードを差す。静かに車は動き出した。
「ガムに会ったら何をお話しするんですか。」
「カンナミは僕の論文読んだことある?」
「すみません。」
カンナミは申し訳なさそうに答えた。
「僕は子供の頃から研究対象だったんだ。でも、自分でも思っていたけど周囲との秀でた違いはなかったんだよ。ただ、僕自身は違和感を感じてた。だから周囲の人との間に感じる違和感の原因を知りたいんだ。これが自然出産によるものなのか、僕の個人的なものなのか。」
「有意義な時間になると良いですね。」
ガムとの待ち合わせは公園内の喫茶店だった。僕達が到着するとすでにガムは店内におり、コーヒーを飲んでいた。
僕達は店内に入るとガムの所へ向かった。
「初めまして。私はアオヒ・ヨコオです。今日はお時間をいただきありがとうございます。」
「あぁ、ガム・ゴールドです。こちらこそ、遠いところありがとう。」
ガムは僕達を見て優しげに微笑んだ。ガムに促され僕は席に着いた。カンナミは席を外そうとしたが、僕もガムも一緒に聞いてくれて構わなかったので同席してもらった。
「連絡が来たときは驚いたよ。こんなに若い自然出産児が居たなんて。」
「記録されている限りでは今のところ私が最年少と聞いています。」
ガムは年齢の割には年を取って見えた。と言っても、僕は70歳以上の人間を見たことはないが。
「他の自然出産児とは会ったことはあるのかい?」
「いいえ、今回が初めてです。だから緊張しています。ガムは会ったことはありますか?」
ガムは軽く頷いた。
「私たちの時代はまだ少しは居たよ。と言ってもほとんどが年上だったけどね。その人たちの一部は本当に自然出産児だよ。」
「というと?」
「自然妊娠、自然分娩だよ。胎児を女性の体内で育てたんだ。」
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