Episode_01.19 亡霊の魔術師


 村人達の防衛線は徐々に収縮すると、居住区に続く坂へ少しずつ後退していく。前線にはヨーム村長、騎士デイル、木こりの棟梁ロスペが立ち、屍人兵の槍を掻い潜りつつ後退速度を調整している。その様子を屋上から眺めるフリタは、


(あれ、孤立しちゃった? マズイかも)


 と不安になる。既に防衛戦は、高台に続く坂の登り口を通り越し、居住区に続く別の坂の登り口を背にする位置に移動している。しかし、良く見ると屍人兵達は高台に続く坂には見向きもせず、ひたすら正面の坂の登り口に形成された防衛戦への攻撃を続けている。


(なんでかしら?)


「フリタさん、僕達見つかって無いのかな?」


 弓矢による援護射撃を断続的に行いつつ、ユーリーが訊いてくる。ユーリーの弓はそれほど強い弓では無いが、高低差に助けられ、先ほどヨーム村長を援護したような働きが出来ているのである。


「そうだとしたら、ちょっと大人しくしてようかしら?」


 重装備の敵に対して弓矢による援護射撃が余り効果的で無いと感じていたフリタは、ユーリーの問い掛けにそう答える。残りの矢も限られているし、丁度居住区側から態勢を整え直した投石隊が投石を開始したところである。大人しく、偵察・連絡に徹しようかと考え始めていた。フリタの隣では、ユーリーが「加護」の術を掛け直している。戦いが始まって、すでに二時間近く経過しているので、付与術の効果が切れていたのだ。


 その時、ふと何者かの気配を感じてフリタは屋上への登り口の場所を振り向く。その動作に釣られて、ユーリーもそちらに注目する。すると何者かが梯子はしごを上ってくるのが見えた。暗がりの中梯子を登り切ったその人物は腰の辺りを叩きながら背を伸ばす。


「ここまで登ってくるのは一仕事だのう」

「メオン! どうしてここに?」

「おぉ、フリタ。ご苦労さんじゃのう……」


 メオン老師は、フリタ達に近づきながらそう言い掛けるが、途中で目を丸くする。


「ユーリー! お前ここで何をやっとるんじゃ!? フリタ! どういう事じゃ?」


 メオン老師の怒鳴り声に、フリタは引き攣った表情で、


「えーと、なんと言うかその……後を付けられてついて来ちゃったみたい?」

「ぼぼぼ、僕が勝手について来ちゃったんだよ」

「馬鹿者! まったく、フリタもフリタじゃ。子供に後を付けられて気が付かんとは、不注意にも程があるぞ」


 メオン老師の剣幕に、フリタはユーリーを擁護しようと


「で、でもね、メオン。ユーリーったら弓も上手いし魔法も使えるし。凄いのよ……」


 しかし、途中でメオン老師に藪睨みされると、声が小さくなり途切れてしまうフリタであった。


「なんぞ、言いたい事でもあるのか?」

「いえ、ありません。ごめん……なさい」

「ごめんなさい」


 メオンに怒鳴られて、ユーリーはおろか、フリタまで小さくなっている。


「まったく……この期に及んで一人で帰すわけにもいかぬし、ユーリー! 大人しくしておるんじゃぞ!」

「はぁぃ……」


「まぁ、それはそれとして……」

「なんじゃい?」


 メオンは機嫌が悪いようだが、フリタは気を取り直し、先ほどの疑問をメオンに尋ねる。


「なんで連中は、こっちに来ないのかしら?」

「こっちの上り坂に『鏡像ミラーイメージ』の術を掛けてある。連中には、坂の代わりに反対側の広場と同じ景色が映って見える筈じゃ」

「へぇ、やっぱり流石ね!」


 フリタのあからさま・・・・・なお世辞に、メオン老師はフンッと鼻を鳴らすと下の様子を伺う。


「……大分に押されておるな」

「そうね、どんなに訓練していても素人は素人だしね。でも、ヨーム村長もロスペさんもあの若い騎士も頑張ってるわね」


 眼下では、坂の登り口をめぐる攻防戦が繰り広げられている。最前線に立つヨーム村長と騎士デイルは、互いにフォローしあいながら屍人兵の攻撃を跳ねのけている。合間合間で、ロスペと木こり衆の木槍や投石隊とルーカの遠距離攻撃がそれを援護し、防衛線はジリジリと後退しているが、安定しているようにも見える。


「さて、どうやって援護しようかのう?」


 一方のメオン老師は、本来の目的を果たすため、杖を握りしめると、思案を始める。


「フリタ、大地の精霊神に頼んで、連中を丸ごと生き埋めにできんか?」

「……あのねぇ。私がそんな大した術者じゃないのは知ってるでしょ?」

「言ってみただけじゃ」


 メオン老師の厭味に「なによ」と抗議しつつ下の様子を伺うフリタの目の前を何かが横切った。


ブゥン、ブゥン


 咄嗟に目でそれを追うと、それは防衛線の木こりの二人に命中し、勢い余ってその木こり達を吹き飛ばす。矢による攻撃のようであったが、その攻撃力は固定弩バリスタのような威力である。


「伏せて、メオン、ユーリー!」


 メオン老師とユーリーを伏せさせると、自分も姿勢を低くしながら屋上を壁側に移動する。壁の周辺を確認すると、篝火が照らす範囲の外、穴の外側に人影が見える。人影は矢を番えた弓を引き絞っているが、その弓は常人では有り得ないほど、限界まで引き絞られている。矢を放つ瞬間の弦の唸りが聞こえてきそうなほどの勢いで、再び二発の矢が立て続けに放たれる。唸りと上げて飛ぶ矢は、さらに防衛線の木こりを数人巻き込み吹き飛ばす。


「あれ? 昨日村に来ていた冒険者の女の人じゃないかな?」


 フリタの隣から、頭を上げてユーリーがそう言う。


「お前は、大人しくしておれ!」


 そのユーリーの隣から、ユーリーの頭を抑えつけながらメオン老師が頭を上げる。


「あの攻撃、厄介ね。メオン、どうにかならない?」

「うむ、少し距離が遠いが……フリタ、なんとかあの辺りを明るくできんか?」


 古代魔術(またはロディ式魔術)の制約の一つに、ハッキリ認識できない目標に対して有効度が下がる、というものがある。特に、対象を必要とする術 ――例えば「付与」や「投射」といった型の術―― に於いて対象の認識が曖昧だと、効果が下がったり失敗する確率が増加するのだ。そして、メオンの老いた目には、対象の人影が暗過ぎて良く見えないのだ。ハッキリ見えれば、対処の方法は幾つか考えられた。


「分かったわ」


 フリタはそう返事すると、精神集中する。人影の一番近くにある篝火に宿っている炎の精霊に呼びかけ、炎の勢いを短時間だけ強めて貰う火精招来コールファイアの術を使うのだ。


 暫く精神集中を続けたフリタの呼びかけに応じて、篝火かがりびの中の炎の精霊は炎の勢いを大きくする。高く上がった炎に照らされて、弓を構える元冒険者の女戦士が浮かび上がる。その姿を視界に捉えると、メオンは火爆矢ファイヤボルトの魔術陣を起想する。素早く展開を終え術が発動されると、メオンの眼前に投げ槍ほどの大きさの炎の矢が二本出現し、一斉に低い弾道を描きながら元女戦士に向け投射される。炎の矢は綺麗な炎の線を夜空に描くと対象に着弾し、爆発を伴い燃え上がる。少し遅れて、ドォンドォン、と連続した爆発音が伝わってくる。


 爆発が治まると、元冒険者の女戦士が立っていた辺りの地面が少し抉れ、女戦士の物と思われる装備品が散らばっているのが見えた。


「やったわね!」

「お爺ちゃん、すごいや!」


 フリタとユーリーの弾んだ声に


「当たり前じゃ、最高強度で叩きこんでやったのじゃからのう」


 とメオン老師は答える。そして、フリタは「遠話」の術でヨーム村長に話しかける。


「ヨーム村長聞こえる?」

『フリタか? 今の攻撃は何処からだ? 敵は攻城兵器でも持ちこんでいるのか?』


 風の精霊を通して、ヨーム村長の焦った声が聞こえてくる。その後ろでは、ロスぺが大声で指示を出している。負傷者を後退させているようだ。


「もう大丈夫よ、メオンが魔術で倒したわ。さっきの攻撃はもう来ないわよ」

『本当か! 良かった。おーいみんな、さっきの攻撃はメオン老師の魔術で排除されたぞ。もう大丈夫だ!』


 ヨーム村長の後ろで歓声か怒号か分からない声を上げているのは、ロスペだろう。その声に呼応して、木こり衆は大声を上げる。


『もう直ぐ応援がくる! みんな持ち堪えろ!』


 士気を鼓舞する騎士デイルの声も聞こえてくる。


**********


 騎士デイルは防衛線の先頭に立ち声を張り上げ、木こり衆を鼓舞しつつ屍人兵と切り結ぶ。先程の矢による攻撃で一時的に防衛線が崩され掛ったが、デイル、ヨーム、ロスペが前線に出ることで、何とか持ち直している。


 デイルは、黒屍犬デスハウンドと死闘を繰り広げた際に左肩を軽く脱臼したらしく、盾を持つ手に力が入らない。重さを支えるのも辛くなり、今は左手の盾をぶら下げているだけの状態だが、ロスペがそんなデイルの左側をフォローしつつ戦ってくれている。一方、デイルの右隣のヨーム村長は一度に数体の屍人兵を相手にしているが、疲労が蓄積しているようで。敵を押し返す度に肩で息をしている。


(俺もそろそろ危ないな……)


 額にルーカの矢を受けた状態の屍人兵が平然と槍を突き出してくる。その槍を剣でいなすと、相手の腕を叩き落そうと上から愛剣を叩き付けつつ、デイルはぼんやりとそう思った。


 屍人兵はデイルの剣を籠手に受けるが、動じることなく槍を引き再び突き出してくる。普通の相手ならば、武器を取り落とす勢いの打撃であるが、この相手には効き目がないようである。


(全く、不公平な奴らだぜ……)


 何度も何度も、正確にこちらの急所を狙って突き出される槍を、デイルは毎度振り払っては攻撃を返す。そこへ何度目かの投石攻撃が割って入る。握り拳よりやや大きいサイズの石が坂の上から勢いよく屍人兵の集団に浴びせられると、何体かの敵は石をまともに受けて転倒したり、後ろへ下がったりする。


 デイルを攻撃していた屍人兵も投石を頭部に直撃され、姿勢を崩す。デイルはその隙を見逃さず、相手の首筋へ剣を叩きこんだ。愛剣バスタードソードは唸りを上げると相手の鎧の襟元と兜の隙間に吸い込まれ、その首を切断し反対側の襟元で止まった。


(これで、何体目だ?)


 明確な致命傷ならいざ知らず、なまじの攻撃では倒れることも無い敵に、数の感覚が麻痺するデイルだった。そこへ――


「少し後退するぞ!」


 というロスペの合図が掛かり、デイルを含めた防衛線が少し下げられる。先頭に立って戦う三人の後ろに木槍の穂先を持ち上げた状態の隊列があり、三人がその隊列の後ろまで移動した時点で穂先を水平に構える。これで、防衛線は上り坂の始まる場所から数メートル後退したことになった。


「デイルさんよ、大丈夫かい?」


 隊列の後ろ側で、荒い呼吸を整えているデイルにロスペが話しかけてきた。ロスペの目には大小多くの切り傷を受けたデイルの痛々しい姿が映っている。一方で、自分を見るロスペの視線を追うことで自分がかなり負傷している事に初めて気が付くデイルだった。


(戦闘中は興奮して余り痛みを感じない……ていうのは本当だったんだな)


 などと、他人事のような感想を持ったデイルは、大丈夫だ、という意味で右手を上げた。そこへ、呼吸を整えたヨーム村長が近づいてくる。流石に目立った外傷は負っていないが、その表情には疲労感が色濃く浮き上がっている。


「四体は倒したが……メオン老師の援護が欲しいな」


 右上 ――高台の集会場の場所―― を見ながら、そう呟いた。


**********


 集会場の屋上では、メオン老師が精神を集中し術の発動に取り掛かっている。今回の襲撃に対して「念のため」と称して秘密の場所から取り寄せた杖の力を使うつもりである。杖は所謂いわゆる魔法の杖、魔術具と呼ばれる魔力の籠められた品で「光導の杖」と伝わっている。制御の難しい高位の極属性光の魔術陣を秘めており、少ない魔力消費で威力の高い術を発動できる強力な魔術具である。


 集中したメオン老師の魔力に応じて、杖から光爆波ライトバーストの術陣が展開すると、ほぼ自動的に発動まで展開して行く。設定した発動点を中心に効果が発生する、放射型の高位魔術であり亡者アンデットの類には特に効果が高い。この術を、眼下の防衛線に目掛けて殺到している屍人兵の集団の中心に向かって使用するつもりなのだ。


 そうして集中を続けるメオン老師の隣では「大人しくしておれ!」と言われたユーリーが、壁の向こうへ目を凝らしたり、後ろを振り返ったりしている。何となく、少し前から何者かの気配を感じるのだ。まるで、狩りの途中に肉食性の野獣に出くわしたような、妙な胸騒ぎがする。フリタに訊いてみようとするが、フリタも眼下の敵に対して弓の狙いをつけている。少しでも効果的な援護射撃をしようと集中しているようで、ユーリーの感じる気配には気付いていない様子である。


(おかしいなぁ、気のせいかな?)


 そう思うユーリーだが、ふと強烈な存在感を感じて頭上を見上げる。月明かりの無い真っ黒な空、その一角で周囲の闇とは質感の違う黒い何か・・・・が風にはためいている。「何だろう?」と目を凝らして見ると、その黒い何かから紫色の光が鋭く発せられた。


「ッ!」


 考えるより早く身体が反応し、ユーリーは術を発動しようと精神集中を続けるメオン老師と、弓の狙いを定めるフリタに体当たりしていた。


ズドン!


「なんじゃ!?」

「きゃぁ」


 メオン老師とフリタは口々に驚きの声を上げる。突然ユーリーに突き飛ばされて術の発動に失敗したメオン老師は、今まで自分達が立っていた場所の一部が大きく削れて吹き飛んでいるのを目の当たりにして絶句する。


「上から!」


 転倒した状態から身体を起こしつつ、ユーリーが目標を指差す。既に身軽な動作で起き上がったフリタは、ユーリーが差す目標に向けて素早い動作で矢を打込む。風切り音を響かせ矢は暗い夜空に吸い込まれていくと、目標の手前で見えない障害物に阻まれてしまった。


 上空の何者かから再び紫色の閃光が放たれる。


バシンッ!


 しかし、この攻撃は咄嗟にメオンが発動した魔力套マナシェルの術に阻まれ三人に直撃することは無かった。障壁に弾かれた紫色の光の矢は、周囲に飛散すると集会場の石造りの屋根の上に浅い傷を付けながら霧散する。障壁内の三人は強い衝撃を感じたが、直接的なダメージは負っていない。


 夜空に浮かんだ何者かは、三人の目の前で徐々に高度を下げると同じ屋上の少し離れた場所に降り立った。黒色のローブを纏った女性らしい体つきの何者かは、赤紫色の燐光を放つ大きな魔石を頂いた大振りな杖を片手に視線を三人の方へ向ける。夜風に吹かれ、目深にかぶったフードが外れると、そこにはつい昨日見かけた女魔術師アンナの顔があった。


「アンナさん? どうしたの?」


 ユーリーは思わず、アンナの方へ歩き出そうとするが後ろからフリタに制止される。フリタは、そのままスッとユーリーの前に出ると、ユーリーを庇うように弓を構える。


「……サハンの娘……では無いな! お主は何者じゃ?」


 メオン老師の何時いつにも増して鋭い声が誰何すいかする。


「吾輩の名は、ラスドールス・エンザス。お前達蛮族が古代魔術帝国と呼ぶローディルスの魔術師だ」


 何者かは、アンナの声で自らをラスドールスと名乗る。どちらかというと、高いトーンの女性らしい声だが、口調は威厳のある男性のものである。ラスドールスは話し続ける。


「お前は見たところ魔術師のようだが、この集落には魔術師はお前一人か?」

「それがどうしたと言うのじゃ!」


 メオン老師は、内心の動揺を隠しつつ何とかこの局面を打開する方法を探る。


「ふむ。ならば問うが、この集落は古くからここに在るのか?」

「いや、ここは開拓者の村じゃ。出来て二十年程しか経っておらんが、それがどうしたというのじゃ?」


 この返事に、ラスドールスは落胆を感じた。上空から見たところ、この集会場になっている建物と周囲の地形は、この集落がかつて彼の一族が逗留とうりゅうしていた場所に在ることを示しているが、今の住人は彼の一族とは全く無関係のようである。


(ならば、仕方がない。いずれにせよ、滅ぼしてしまうことに変りは無い)


 ラスドールスは当初からの目的の一つ ――彼の不死の軍団を作り上げるという目的―― を果たすことを決心した。


「貴様の目的はなんじゃ? 七百年以上昔に滅んだローディルスの魔術師が何故ここにおるのじゃ?」


 ラスドールスはメオン老師の問いには答えず、持っている杖を振り上げる。


「もはや、この集落に別段の用事は無くなった。しかし、吾輩の復活を祝して集落の住民は吾輩の下僕に……」


 言い掛けるラスドールスの不意をつき、フリタが近距離から連続して矢を射掛ける。三発、四発、五発、と凄まじい速度の連射であるが、矢はどれも、ラスドールスの手前の空間で止まると、勢いを無くし地面に落ちる。


半妖はんようめ、無礼であろう!」


 話を遮られた怒りを以ってそう言うと、ラスドールスは杖を振り下ろし術を発動させる。目に見えない魔力マナの奔流が衝撃波となって、メオン老師の障壁をも突き破りフリタに襲いかかる。


「きゃぁ!」


 咄嗟にユーリーを後ろに突き飛ばしたフリタは、衝撃波に打たれると屋根の縁まで吹き飛ばされ、動かなくなった。


「おのれ!」


 一呼吸遅れて、メオンの術が発動する。メオンの目の前に五本一組の炎の矢が数組、全部で二十本近く表れる。火炎矢フレイムアローという大きな爆発を伴わない炎属性の攻撃魔法だ。その炎の矢が一斉にラスドールスに目掛け放たれる。


「ふん!」


 しかし、炎の矢はラスドールスに届くことなく手前で消滅してしまう。ラスドールスは自身の周囲に対物理・対魔力両用の障壁を展開しているのだろうが、これはメオン老師の予想範囲内であった。十分な防御力に守られているためか、こちらを蛮族と見下しているためか、恐らく両方の理由でラスドールスの動作には隙が多い。


(余裕で居られるのも今のうちじゃ)


 メオン老師は、火炎矢を放つ直前から並行して・・・・「光導の杖」の術の発動にも取り掛かっていたのだ。自分で起想と展開をして発動する必要のある火炎矢と違い、杖の術は魔力を籠めるだけで自動的に発動するのだ。メオン老師はサッと杖をラスドールスに向けると光爆波ライトバーストの術を発動した。


 ラスドールスの目の前に突如として光の球体が出現する。


「しまった!」


 光の球体の出現に気付いたラスドールスは慌てた様子で対抗術を発動しようとするが、球体は強い光をまたたかせて一気に収縮すると、ある一点を超えた瞬間大爆発を起こした。衝撃波と熱、それに光が加わり辺り一帯が一瞬だけ昼間のように明るく照らされていた。


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