第25話 大規模整備作業研修

先週、整備部としての見学実施研修は終わっています。

今週から本格的に整備実施研修に入ります。


管理整備官の資格を持っているお二方は、整備士業務も出来るのですが、大樹の丘ここは違います。

それは、先週の見学でしっかりと解っている様子でした。


大樹の丘ここには、整備士の中でも光の大庭園ライト・ガーデンでトップクラスのお二方が居るからです。

一人は、年間整備士ランキング上位5指に入っているルーモ主任。もう一人は、表舞台には立たずとも整備技術はトップクラスのアス整備官。

ルーモ主任と整備官であるアス姐のお二方は、整備技術では双方で別々の技術を主にしており、大樹の丘ここの双璧とも言えるのです。

ルーモ主任は「大胆かつ繊細に」仕事をしており、アス姐は「気持ちが良い」仕事をしているという違い。


言葉だけでは、確かに意味不明です。

まぁ、ルーモ主任の仕事は解ってもらえると思いますけど、アス姐は難しいですよね。

でも、説明を一つ足すと理解が早いの。


アス姐は、仕事が終わって「気持ちが良い」と誰もが思える整備をされるのです。

設計した管理者であろうと一緒に整備した整備士であろうと誰もが「気持ちが良い」仕事が出来るのです。

理由は、簡単なこと。管理者が設計した図案をより完璧にして、そして整備作業を完璧に行うから。

そうつまりは、誰もが完璧に仕事をしたという「気持ちが良い」に繋がるのです。


元々、アス姐は管理整備官の資格を持っているので、管理者の仕事も出来るので、設計した図案をより良いものに出来るのは当たり前のことであり、そして、整備技術を日々、向上させているので、完璧な仕事をするのも当たり前なのよね。

だから、日々、「気持ちが良い」仕事を目指して、業務を熟しているの。


なので、整備実施研修では、一週間ずつは各々、別の方々付くので、研修方法が違うのです。

妥協点も接点も無いので、この研修が一番、辛いのでは…と私的には思う程なんです。


お二方とも、両者の技術の優秀さは、知っているらしく業務面での相反する仕事面をどう研修で発揮するかが課題になるのです。

私も、大樹の丘の周囲の整備の時に苦労したから、少しくらいのアドバイスは出来るかもしれないのだけれど、してはいけないと両者から言われてしまったので、心の中で応援するのみです。


ルーモ主任の「大胆かつ繊細に」の作業は、誰しもが認める技術面であり、仕事での爽快感を得られます。

まぁ、時折、大胆過ぎて、怒られることもあるのですけれど、そこはルーモ主任の愛嬌というもの。

アス姐の「気持ちが良い」は、アス姐自身が、仕事にやる気がない時は、「気持ちが悪い」仕事になります。

まぁ、前日に飲みすぎたりして、二日酔いが冷めるまでの間だけですけど…。


この研修は競って貰う研修では無く、自分のスタイルを確立して貰いたいと言っておりました。

その件については、ラエル様ご夫妻には伝えてあります。

この一ヶ月で、じっくり今までの整備作業を思い返し、自分のスタイルを確立できれば、合格だそうです。


ラエル様は、アス姐の完璧さには遠く及びませんが、それに近いスタンスで実修をされています。

反対にフィール様は、ルーモ主任の繊細さをより引き立てるようなスタンスで実修をされております。

二人が共同作業をする時は、緻密で繊細な中に大胆かつ完璧な要素を含むというスタンスが確立されつつありますが、周囲の整備士がついていけないので、このスタンスはまだ封印の域だそうです。


この研修に入って、3週目の朝にお二方から私に聞かれたことがあります。


「つかぬことをお聞きしますが、アニス様の整備作業のスタンスは、どのようなスタンスなのかを教えて頂けませんか?」


「こういっては、失礼かと存じますが、お若いながらもアニス様もこの大樹の丘で一区画を任されるほど整備士です。是非、お聞かせください。」


「私のスタンスですか?うーん、正直、わからないんですよね。ただ、皆様が仲良く楽しく仕事が出来ればって思って業務をしてますよ。」


「仲良く楽しくですか?」


「はい。ここは区分特区がありません。だから、上級魔族も下級魔族も関係ありません。ありのままの意見をぶつけ合って、間を取ったり、私の意見で間違っていたりしても、補足してくれるように皆様にお願いして、仲良く連携を取って楽しく仕事をしていただけるように努めているだけです。」


「失礼ながら、そういう考え方は、本来ならバカにされてしまうのですけど、アニス様が言うと現実味があって、素晴らしいお考えですね。私達も区分特区や派閥、上下関係を壊したいから、大樹の丘ここに来たのですから、アニス様の意見を大切に尊重したいと思います。また、それを糧に私達のスタイルを確立していきたいと思いますね。」


フィール様が優しく私に微笑みかけながら、私のアドバイスを聞き入れてくれる。ラエル様は少し考えている様子が見られた。

感じ方は、それぞれだから仕方がないこと。聞き入れてくれることは嬉しいこと。でも、難しいことだというのもわかってる。

私自身、まだ半人前だから、皆のお荷物になることもあるからだ。

でも、私はこのスタンスを変えるつもりは無いし、楽しく仕事ができればいいのだから。


「ルーモ主任、アス姐整備官、お二方の研修はどんな感じですか?」


「まぁ、わしら、正反対の技術者が研修官してるんだから、苦労してると思うが、整備作業に問題は見られないぞ。」


「そうね。お二方とも「気持ちが良い」研修を目指して、日々、努力していると思うわよ。」


「それに、彼らには、ここの区分特区、上下関係、派閥争いが無いことをしっかりと学んで、壊すことをしてもらいたいんだがな。」


「お二方なら、出来るというのですか? ルーモ主任にアス姐整備官。」


「あぁ、あの目には、何かを成し遂げるために大樹の丘ここ来たって目をしてるからな。」


「そうね。娘ちゃんに負けられない何かを成し遂げるみたいな感じにも取れるわよね。」


「まぁ、わしらが深く首を突っ込むことでもないし、答えは自ずとみつかるじゃろうて。」


「娘ちゃんが「節制」の力を持っているから、それに関連しているのかもしれないしね。でも、ここでは関係ないので、無視スルーです。あとアニスちゃん、どさくさに紛れて私をアス姐整備官と呼ばないようにね。いつも通りにアス姐でいいんだから。」


「なんだ、気づいていたのね。わかりましたよ。アス姐。」


「宜しいお返事ね。それじゃ、今日も一日「気持ちが良い」お仕事をしましょう。」


今週も二手に別れるのは、先週と同じ、しかし、今週は研修官がお互いに違うことと一区画ををしっかりと整備することになる。

管理者や整備士もこの件に関しては、伝達済なので、危険や難しいと判断した場合はきちんと意見をしてくれるようになっている。


ラエル様の担当箇所は「光葉樹の森林」、研修官はルーモ主任。

フィール様の担当箇所は「滝の望む庭園」、研修官はアス姐整備官です。

ここは、元々、各研修官の持ち場であり、管理者や整備士も歴戦の兵揃いであるので有名です。


ちなみに最後の週に担当する私の持ち場でもある「大樹の丘」は、大樹の丘の管理整備の上位の方々が整備をされている部署でもあります。


見学の際に、区分特区が無く、上級魔族に対して下級魔族が指示を出していたり、派閥が無い為、管理者と整備士の意思疎通がスムーズであることを学び、2週目の研修で直に区分特区や派閥が無いことを触れ、また自分たちの指示に対しても、適切にアドバイスを貰えているので、各々、自信には繋がっているはずなのです。


あとは、この管理者が持ってきた整備図をどうイメージし、整備するかで変わるのです。

そして、この区画の整備図は、毎回、シャイン様が担当されており、難易度は高いのです。

今週は、シャイン様とレイティア様が整備部にいらして、整備図を皆で確認しています。


「今週の区画整備の整備図を持ってきました。お二方に頼まれたようにいつも通りの仕様にしてありますよ。」


「さすがは、シャイン嬢だ。今回も中々といい整備図だ。」


「ほほう。どれどれ。うーん、これは「気持ちが良い」仕事が出来そうね。」


「お二方にそう言って貰えると満足です。しかし、研修生の方には難しいかとも思われるのですが…?」


「設計したシャインがそれを言っちゃダメでしょ。でも、このお二方なら大丈夫よ。最終週前の肩慣らしなんだから。」


「そうでしたね。最終週は、レイティア様が設計された整備図ですものね。」


「さぁ、それでは、お仕事と研修に取り関わるわよ。はい。お二方も各部署に行ってね。」


「この設計で肩慣らしとなると、最終週は、すごいのが期待できそうじゃのう。」


「そうね。やりがいはありそうね。でも、研修生だけじゃなくて整備士がついていけるかが心配だわ。」


「確かにそうじゃのう。まぁ、そこは慣れた整備士に補ってもらうしかないからのう。」


「そうね。とりあえず、今週の研修と業務をこなしましょう。」


こうして、3週目の研修が始まりました。

2週目とは、まるで違い、上からの指示や整備内容も難しいことが要求されています。

しかし、お二方も整備図の図面を見て、目を輝かせており、やる気、充分と言う感じでした。


そして、今週の研修が始まる前にラエル様より私に一つ聞かれたのです。


「アニス様、天族の力、つまり天力を使って、作業を行っても宜しいでしょうか?」


「私は構わないですのが確認が必要なので、お待ちください。私的には、しっかりとこの作業に向き合うのに力の出し惜しみは危険ですので。お二方には伝えておきますので、少々、お待ちくださいね。」


「ありがとうございます。それでは、少しの間、待たせて頂きますね。」


「では、直ぐに聞いてきますので。」


そう言って、私はアス姐とルーモ主任の所に行き、天力を使う件の了承を得るためにやってきました。

するとフィール様も、直にアス姐とルーモ主任に天力使用の許可を求めていたみたいです。


「お、アニスちゃんもラエル殿から天力の使用申請を求められてきたのかな?」


「はい。アス姐。私もしっかりと作業に向き合う為には、力の出し惜しみは危険ですし、より良いものになるのなら、使って頂いた方が良いと思います。」


「うむ。確かに同意見だ。それでアス姐は、どう考えておる?」


「私もいいんだけど、元々、光の大庭園ライト・ガーデンでの天族の力の使用許可には、中央管理局か特別管理顧問官の採決が必要だからね。」


「うーん、それなら、私が特別管理整備補佐官として、全責任を持ちます。研修生のお二方及び研修官のお二方には処罰がならないように図りますので、大丈夫です。」


「なら、話は早いわね。天力の使用を許可します。でも、力の加減には気をつけてね。」


「はい。ありがとうございます。それでは、持ち場に戻らせて頂きますね。」


「私もラエル様に伝えてくるので、一旦、戻りますね。」


こうして、3週目は天族の力を使っての作業が始まりました。

元々、光の大庭園ライト・ガーデンが故郷である天族の方々は、力を最大限に発揮することが出来るのです。但し、それ相応のコントロールをしないと整備作業は難しいのです。最初は、思った以上の力を使ってしまい、周囲の方々に迷惑を掛けていたようですが、3日目以降はお二方とも、スムーズに力をコントロールし、作業は順調に進んで行きました。


そして、3週目の最終日には、「光葉樹の森林」も「滝の望む庭園」もシャイン様が描かれた整備図以上の出来上がりを見せて、「大胆でとても繊細」で、そして誰もが「気持ちが良い」仕事をやり遂げていました。


「これは、言わずとも知れずに、お二方ともに合格ね。」


「うむ、何も言うべきことはない、素晴らしい整備だ。久しぶりに楽しかったわい。」


「ただし、4週目の最後は、レイティア嬢が作ってくる整備図じゃから、これ以上の出来を求められるぞ。あやつは容赦と言う2文字は無いからな。」


「でも、レイティアちゃんが描く整備図は、とても素晴らしいから仕事をするのに気合が入っていいのよね。研修生のお二方も初日から天力を使って、思いっきり作業して頂戴ね。」


「はい。私達もここまで力を使って、このような庭園を整備できたのを楽しくもあり、誇りにも思っております。」


「私もこの整備図を見た時に、力の出し惜しみは危険だと思ったので、直訴したかいがありました。本当にありがとうございます。」


「「最後の4週目もきちんと研修に励みたいと思います。」」


「お二方とも、素敵な顔ですね。一緒に働いていた方々が天力では無く、魔力などで応用が出来るかなど聞きたいことがあるみたいなので、アドバイスをしてあげて貰えますか?」


「はい。それは是非、喜んで。私達もいろいろな応用が試せるか、是非にご指導していただきたかったので。」


「来週のこともあるので、無理せずにお互いにアドバイスをしあってくださいね。それでは、私は、失礼しますね。」


こうして、私は大樹さまの元に行き、クラ爺に会いにきました。

お説教は覚悟の上です。でも、あれだけ素晴らしい庭園ができたのだから、これ位、大丈夫だもん。

 

「おお、アニス、来たか? 天族の天力の件はおとがめなしじゃ。」


「えっ、よかったのですか?」


「シャイン嬢ちゃんが、あれ程までに真剣に描いた整備図を見たのは久しぶりだし、天力を使わなければ出来んこともあったろうて。」


「確かに魔力や精霊さんの力だけでは、難しい整備図に感じましたね」


「最後の週も天力の使用は認める。だから、いい整備を期待していると伝えておくれ。アニスには苦労を掛けるが、特別管理整備補佐官の職が板についていて、わしも安心しておるのじゃ、最後まで無理せずに頑張っておくれよ。」


「ありがとう。クラ爺。それじゃ、私は戻りますね。」


「うむ、では、またな。」


こうして、クラ爺と解れ、無事にラエル様ご夫妻の3週目の研修を終えました。

一日の休暇の後、4週目、最後の整備実施研修となります。


今回の整備区画は「大樹の丘」になります。


ここでの研修では、闇の大庭園ナイト・ガーデンの植物を使って整備を行って貰うことになっています。

無論、光の大庭園ライト・ガーデンでは、育ち難く、花を咲かせるのも難しいのは解っていることです。


しかし、地下基礎学校の花壇で、闇の大庭園ナイト・ガーデンの花々の種を植えて、無事に育ち、花々を咲かせています。

これを見たレイティア様は、大樹の丘で何とかならないかを検討し、製図した様子です。

この設計図を見たお二方ともに、難色を示す始末。


「これらは、苗木に関しては、育つとは思けど、自然の色は出ないでしょう。そして、花々は夜が来なければ咲くことは無いから、難しいと思うわ。」


「この花々は地下の花壇だな、精霊の光によって咲かれたものだ。夜の休眠がなければ、花も枯れちまうと思うぜ。」


「はい。お二方の意見は、重々、承知です、だから、大樹さまの影を使うのです、」


「レイティアちゃん、大樹さまの影を使っても、難しいと思うわ。闇に匹敵する影ではないのよ。」


「それに栄養分の問題もある。大樹さまは植物に栄養を分けてくれるが、それらを受け入れるかわからんぞ。」


「それでも試してみるのが、今回の意図でもあります。絶対の成功はありません。でも、いつか、光の大庭園ライト・ガーデン闇の大庭園ナイト・ガーデンの植物が育ち、咲く姿が見たいではありませんか!」


「私もそれは見てみたいですね。大樹の精霊様は、問題ないと仰られてますし、あとは研修官と研修生の腕の見せ所ですよ。」


「アニスにそう言われては、敵わないな。まぁ、やることはやってみるさ。ただ、今回、繊細なところをつめてやる。アス姐に大まかな場所と研修生2人の見せ場は譲ってやる。今回ばかりは、大胆に出来んからな。」


「私の方は、持ってきていただいた植物で使えるものと使えないものを選定してから、業務に移ります。幸い、地下で育てていてくれたので、助かってるわ。あとは、外でどれだけ持つかと大樹さまの影でカバーできるかが、問題ね。」


「こんな素敵なプレゼントを地下だけで終わらせるのは、勿体ないですからね。大樹さまの影は闇ではないので、私も精霊さんに頼んで、協力を募ってみますね。」


「では、今週の現場実施研修は2日遅れで開始としましょう。」


このことをラエル様ご夫妻にレイティア様とアス姐から、お伝えになり、ラエル様宅で育てた闇の大庭園ナイト・ガーデンの植物を見せて頂くことになり、問題なさそうな植物を考えることに。


ルーモ主任とシャイン様は、大樹の丘周辺の影の状況を把握し、強い部分と弱い部分、時間帯などを細かく計算する作業に。

各整備士と管理者も同行して、大樹の丘の大改編が始まることになりました。


私は、闇の大精霊シェイド君にお願いをすることに。


「うーん、出来ないことは無いけど、それなりの精霊力が必要になるよ。」


「私の精霊力だけじゃ、無理ってことかな?」


「いや、アニスちゃんの精霊力ならお釣りが大量に来るけど、自然の精霊力は無限にして有限であるからね。ましてや、ここは光の大庭園ライト・ガーデンだから、光の精霊力が強く、闇の精霊力は弱いんだよ。」


光の大精霊レムちゃん、どうにかならないかな?」


「大樹の精霊に力を借りれば、その場の光と闇の精霊力の均衡は取れるはずです。ただ、大樹の精霊も弱っているので、回復させてあげないとこの件は上手く行かないかと思います。」


「大樹の精霊が弱ってるって? もしかしてクラ爺が住んでいるから?」


「いえ、そういうことではありません。遥か昔、この丘にも光晶樹の大森林があったのですが、それらが一つになり「光の大樹ライト・ビッグツリー」になったと言われています。様々な精霊が支えて来てはいるのですが、その力が徐々に衰えてきているのです。なので、アニス様の精霊力を分けて頂ければ、この件はどうにかなるかと思います。」


「具体的にどれくらいの精霊力を与えればいいのかしら?」


「うーん、半分くらいでしょうか…。」


光の大精霊レムちゃん、大事なことを忘れてるよ。四大を呼び出して、彼らからも力を借りないと成功はしないよ。」


「そうでしたわ。四大の大精霊様を呼んで頂き、アニス様の精霊力を半分程と四大の大精霊と私達の力を、分け与えて頂ければ、成功するかと思います。あとは、大樹とその精霊さん次第ですわ。」


「なら、あとは時の精霊さんにも頼む必要があるみたいね。大樹の丘の一定範囲内に同じ時を流れを組み込めば、問題ないでしょ。」


「そんな高度な精霊術ばかりを使えば、少なくとも数週間は、動けなくなると思うのですが、大丈夫なのですか?」


光の大精霊レムちゃんの言うとおりだよ。ホントに大丈夫?」


「私の精霊力だけで何とかしたい気持ちはあるけど、皆の力も借りるから、大丈夫。心配しないで。」


こうして、時間はあっという間に過ぎ、「大樹の丘」の整備作業が開始となりました。

私の出番は、最後の日になるので、それまでは補佐業務です。

闇の植物で使えるものと光と闇の植物の交配して出来た新種など、様々な新しい植物が大樹の丘周囲の花壇や大樹の周囲の植物に植え込まれていきます。強い光で育つ植物や強い光を奪う植物も必要最低限に使い、光と闇を均等にした整備作業が続いております。


研修生のラエルご夫妻も研修官のアス姐もルーモ主任も慎重な作業が続いております。

シャイン様とレイティア様は、管理者に状況の進展と把握に努め、大掛かりな整備作業となっています、

この大変、忙しい中で、上から覗いてるクラ爺が呑気に過ごしてる位でしょうか…。


そして、4日目の朝を迎え、私は、誰よりも早く大樹の丘にきて、大樹の精霊と会話を始めます。


「大樹の精霊よ。我が声に耳を傾けよ。我が名はアニス。精霊姫エレメントプリンセスであります。」


「アニス様、ここ数日の件は、わかっております。私に大樹とその周辺の管理をしてほしいとのことですよね。」


「はい。その通りです。足りない力は補うつもりですので、どうかお願い致します。」


「わかりました。私も大分、力的には衰えてきておりますが、出来る限り、アニス様の恩恵を承りたいと思います。」


「それでは、皆が来る前に始めますね。」


「はい。宜しくお願い致します。」


「我はここに願う。光と闇、四大の大精霊達よ。我が前に顕現し、我と大樹に力を貸し与えたまえ。」


しかし、精霊が顕現しない。どうして?

いつの間にか、私の周囲を囲まれている。なんで?

混乱している私に何者かが、私を襲ってこようとするが、何者かの一撃で、その場に倒れる。


「アニス様。お気を付けください。外部からの精霊召喚の邪魔を企てている輩がおります。」


「ここは我ら、光と闇の双子しまいお任せください。」


琉璃ラズリ様と瑠璃ラピス様のお二方が私を助けてくれた様子。


「この者達は、アニス様にラエル様一家とこの大樹を狙う不届き者達です。私は闇の大庭園ナイト・ガーデンの特別管理顧問官の命にて参りました。妹にも光の大庭園ライト・ガーデンの特別管理顧問官の命が後に下る予定です。なので、この場は我らが制しますので、アニス様は、安全な場所へ。」


琉璃ラズリ様の言葉に、混乱していた私が冷静になる。折角、ここまで皆で力を合わせてやってきたことを無にするなんて絶対に出来ない。

だから、絶対に許せない。私の力で、この者達に罰を与えないと気が済まない。

外部からの大規模精霊封印陣が成されているのなら、私が無効化キャンセルすればいいこと。

あとは、お二方のサポートをしつつ、大精霊さん達に罰を与えて貰いましょう。

私の逆鱗に触れたことを後悔するといいんです。


私は、ゆっくりと精霊力を高めていく。私を狙ってくる攻撃は、私の精霊力で発動した精霊結界陣で全て防御している。


琉璃ラズリお姉さま、アニスちゃんの様子がすごく怖いわ。たぶんだけど、逆鱗に触れたみたいね…。奴らが敷いた巨大な精霊封印陣は、直に破られると思うわ。そうしたら、私達のサポートをしてくれると思うから、それで一気に殲滅しましょう。」


瑠璃ラピス、それ本当なの? 私にはあまり変わったようには思えないけど、直ぐにってどれくらい? 結構な手練れだし数がいるわ。私達の全力を出せば別だけど…。それをすれば、ここまでやってきた整備が無駄になるから、出来る限り温存して叩かないと…って聞いているの?」


「お姉さま、カウントを始めるわね。3・2・1・0!」


瑠璃ラピス様のカウントが0になった瞬間に私は、内なる精霊力を爆発させて、両眼は一気に精霊眼に変化する。琉璃ラズリ様が言っていた精霊封印陣の大きさを正確に把握し、私の力で無効化キャンセルする。そして、私は願う。


「我は願う。光と闇、四大の大精霊よ。今、ここに顕現せよ。この地の精霊の力を封印せし者達へ戒めの罰を与え、また封印に関わりし者へ罰とそれに相対する者に大いなる力を貸したまえ。」


顕現した大精霊達が襲撃した輩に罰を与えていく、そして、魔天の双子に精霊の加護を与え、殲滅力を加速させていく。


琉璃ラズリ姉様、精霊が力を貸してくれるから、その力で一気に殲滅してしまいましょう。」


瑠璃ラピス、殲滅って言っても、もう残党狩りになってるわよ。」


そういうと、数百といた手練れの者達の半数が、大精霊の力によって、戒めの罰を与えられている。

私は、逃がさない為、時の精霊に願う。


「我は願う。この場より逃げし者への時を止めよ!」


こうして、数百という手練れが逃げることも出来ず、制圧していくのには、時間にして1時間はかからなかった。

光の古竜さまは、気づいているのに、傍観していたのは言うまでもない。


「それにしても、アニス様の精霊補助って凄いわね。私自身の力と合わせたら、もっと凄い力になってるもの。」


琉璃ラズリ姉様、手加減しながらも楽しんでたでしょ。これだけの精霊の恩恵を受けられるチャンスはないのはわかっていますけど、きちんと仕事してください。」


「それはそれできちんとお仕事はしたでしょ。瑠璃ラピス、あとはこいつ等どうしましょうかね?」


琉璃ラズリ姉様が持ってきている拘束監獄球プリズンボールに収監すれば、終わりだと思います。」


琉璃ラズリ様に瑠璃ラピス様、これは一体、どういうことなのでしょうか?見た所、天族の方々と見られる者がこの「大樹の丘」を襲ったとしか思えませんが…。」


「えぇ、ラエル様御一家に研修官の皆様は無事ですわ。今回、奴らの狙いは、アニス様とこの大樹だけだったから。」


「それは、特異点の件と何かあるのですか?」


「まぁ、無いとは言えないですね。主犯格が闇の大庭園ナイト・ガーデンにいるので、何とも言えないのです。」


「私は琉璃ラズリ姉様の援護で連れてこられただけなので、詳しい事情はわかりかねますがが、これだけの手練れを操れるのは七大天族の誰かとしかいうようがありません。もう一つ付け加えると七大魔族にも精通していなければ、ここまでの手練れを送ることも出来ないと考えます。」


「そうですか。わかりました。あのお二方、できれば、私の警護を少しの間だけ頼まれてくれますか?」


「まさか、今、あれだけのことをしたのに、大樹に力を与えるのですか?」


「えぇ、そのつもりですよ。別に大して精霊力ちからは使ってないので。」


「ねぇ、瑠璃ラピス、この方の力をどう思う。あの方に匹敵するんじゃないの?」


琉璃ラズリ姉様、うーん、それはどうでしょうか?本当の力を見せることは、きっと無いと思うので何とも言えませんよ。」


「あのう? お二方、宜しいですか?」


「「えぇ。わかりました。」」


「顕現せし、光と闇、四大の大精霊よ。我と汝らの力を持て、大樹とその守護せし精霊に大いなる力を分け与えん。」


大樹の精霊に、光、闇、火、水、風、土、そして私の精霊力が分け与えられていく。

数百億の年月を生きた大樹であり、それを守護していた精霊へ分け与える力は、凄まじいものがありました。


この間にも、私達を狙ってきたものが、居たようだけど、魔天の双子と古竜さまによって、守護され、事無きを得て、無事に力の譲渡が完了しました。


大樹は、光だけでなく、他の精霊の力も宿し、精霊樹エレメント・ツリーへと進化を成し遂げました。

これにより、闇の大庭園ナイト・ガーデンの植物も無事に成長することが可能となり、「大樹の丘」の大整備は完了となる予定です。


管理整備棟へ向かう時間に大樹の変化に気付くものが多く、そのまま大樹に向かい、研修官も研修生も驚きの余りに声が出なかったようです。

精霊力の受け渡しや緊張感が解けて、眠ってしまった私を魔天の双子が警護していたので、皆が気になっていたようですが…。

その後、精霊樹と変わった大樹の元で、整備作業は着々と進み、大整備作業となった研修は無事に終わりました。


この件に関するレポートは、全ての実施研修の総まとめとして、提出するように伝えてあるので問題ありません。


しかし、私を狙う輩も現れ、この交換研修には、まだまだ危険も付き添いそうです。

とりあえず、今日は半分以上の精霊力を使ったので、すごく疲れたので、次の研修までは、ゆっくりと寛ぐ予定です。

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