第26話 整備実施研修

天族の御一家が大樹の丘へ来て、三ヶ月目になります。

ラエル様御一家も大樹の丘の環境に慣れてきた様子です。

私は先の「大樹の丘」の襲撃事件で使った精霊力が完全に回復してないので、簡易補佐となってます。


ラエル様ご夫妻の技能講習研修も一通り、無事、問題なく終了しました。

ラファちゃんは、精霊さんと友達になり、学校でも友達が出来て、先月末には地上そとに出て皆で遊んでいる様子も見られました。


本日から、ラエル様ご夫妻は、管理整備棟にて管理研修に入ります。

管理研修の主任指導は、シャイン様が務めます。

シャイン様は、レイティア様がするものだと思っていたらしく、主任指導を任されて驚いていました。

個人的には、シャイン様が管理技能講習研修をしていたので、当たり前だと思っていたのですけどね。


と言う訳で、ラエル様ご夫妻よりシャイン様の方が、初日から緊張気味です。


「ほ、本日より管理棟での管理技能研修を行います。しゅ、主任指導を任されましたシャインです。よ、よよ、よ宜しくお願い致します。」


「シャイン様、緊張なさらずにいつも通りに研修をお願いします。」


「そうですわ。シャイン様、管理技能講習の時のようにお願いしますね。」


「は、はい。緊張していますが、宜しくお願い致します。」


「シャイン、貴女が緊張をほぐされてどうするの?」


「でも、レイティア様が主任指導するものだと思っていたので、緊張してしまっているのです。」


「私は、自室で仕事をするから、貴女がきちんと指導するのよ。アニス、補佐の方、しっかり宜しくね。」


「はい。わかりました。しっかり補佐させて頂きます。」


こんな感じで、初日の研修が始まりました。

シャイン様が緊張していたので、初日のみは補佐の私がメイン的な立場になっていたのは言うまでもありません。


管理実施研修は、管理棟での実施研修となります。

元々、管理整備官の資格を持っているラエル様には、問題ない研修なのですが、この丘では、管理者と整備士の派閥や上下関係がないことを本当に驚かれていました。

他の管理整備棟では、管理がやや上に見られがちなのですが、ここではそういうことが全く無いのです。

偶に整備官上の様に見られることがある位なので、変わった管理整備棟でもあるのです。


管理官としての実施研修は、下位~上位までの区分をすることなく一ヶ月間、ここの管理官として実施研修を行って貰いました。

シャイン様は、管理補佐官という立場ではあるのですが、業務的には管理官業務を問題なく熟せる為、そのことにもラエル様ご夫妻は驚かれていました。

但し、レイティア様の前では、相変わらず、ドジっ子になるのは、相変わらずなので、私が補佐をしていたのは言うまでも無く…。

最初の一週間は、このドジっ子ぷりに大変、驚かれていましたが、2週目になると流石になれた様子で、私の補佐が無くても、シャイン様の管理補佐をしていました。


「すみません。ラエル様、フィール様、レイティア様の前だとシャイン様はいつもドジを踏んでいるので、皆がフォローしているんです。」


「いえいえ、最初の週は、驚きましたが、皆様が冷静に対応しているので、そちらの方にも驚きでした。」


「私達もシャイン様のいつもの仕事っぷりからは、レイティア様の前で予想できないことをすることに驚きでした。」


「これが月一回の査察か視察のみだったのが、週一回の報告になったので、皆、必要以上に慣れてしまったのですよ。」


「ということは、管理者の皆様だけでなく、整備士の皆様にも伝わっているのですか?」


「はい。そうなんですよ。ラエル様。」


「整備士さんの方々も慣れてしまうというのも素敵なことですね。」


「そうですか?フィール様。」


「そうですよ。大樹の丘ここは管理が上、整備が下というようなことがなく、管理と整備の連携が自然に出来ていることが凄いのですよ。」


「自然な連携ですか? 言われてみれば、大樹の丘ここは派閥みたいなものはないですし、皆、仲がいいですからね。」


闇の大庭園ナイト・ガーデンの管理整備棟では、区分特区だけでなく、管理と整備の区分けもされてしまっていて、自然な連携ではなく、管理官と整備官のみの連携になってしまっているのです。だから、大樹の丘ここは素敵なんです。」


「そういうものなんですね。私は大樹の丘ここで働いていたのが初めてだったので、これが当たり前のことだと思っていたのですが、見識を少し改めないといけないのかもしれませんね。」


「そうね。アニス。大樹の丘ここは特別なのよ。中央管理局で私が別の管理整備棟へ査察や視察に行く際は、区分特区や管理と整備の区分けがあるところもあるのよ。」


「レイティア様、いつの間にいらしていたんですか?」


「いえ、こっそりとラエル様ご夫妻の実修の見学してたら、面白い話をしていたので、話に入ってみただけよ。」


「レイティア様、こっそり見学されるのはいいですけど、シャイン様が居る時は止めてくださいね。」


「わかってるわ。あの子ったら、私の気配がするだけで、業務中にポカするんだもの。必要以外は、この研修中はポカをさせないように私が気をつけてるわ。」


「すみません、レイティア様。お気遣いいただきありがとうございます。」


「お礼なら研修が終わった後に私にじゃなくて、シャインに言ってあげてね。本人からも直接、言われてるから。まぁ、この機会にしっかり直したいんだけどね。」


「それなら、管理整備研修の時にお願いしますね。」


「アニス。それはいい考えね。その案に乗ったわ。ラエル様方にはご迷惑を掛けるかもしれませんけど。宜しくお願いしますね。」


「「はい。わかりました。シャイン様には内緒にしておきますね。」」


「さすがは、息があってますね。」


「「はい。夫婦ですから。」」


私の両親と同じところが偶にあるのよね。ラエル様ご夫妻って。

まぁ、いい意味で取ってはいますけどね。

研修中に惚気たりすることは無く、研修態度は至って真面目で、そういう点では両親には見習ってほしいものです。


この一ヶ月で、管理研修の一連の流れや各管理官の業務は、普通以上に行えておりました。

管理整備棟内では、私達に狙いを定めた事件も特になく、無事に終えて何よりでした。

研修に関しては、私の補佐が要らない位だと思いましたが、油断は禁物です。

まぁ、元々、管理のお仕事は、私のメインの業務ではないので、出来る限りの補佐をしただけなんですけどね。

でも、ラエル様ご夫妻は、私に対して大変、感心されていました。


元々、整備士なのにここまで、管理官研修を補佐できるとは思ってなかったようです。

私自身もここまで補佐できるとは、思ってなかったのですが、レイティア様の研修や普段の業務が功を奏したようです。

来月からは、管理整備実施研修です。

シャイン様も研修を受ける羽目になるんだろうなぁ~と思いつつ、私の負担が増さないことを祈るばかりです。

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