第二章 交換研修前の自己学習
第4話 変わる日常
クラ爺とレイティア様の臨時査察が終わって、数週間が過ぎました。
私は、ルーモ主任にようやく認めて貰い、大樹さま周囲の整備作業を任されるようになりました。
わからないことは先輩整備士や管理者さんに聞きながら、この庭園をイメージして、何が不要で何が必要か考えながら作業する日々です。
大樹さまの周囲は場所や時間によって大きな影が出来るので、それをどう活用して作業するのが、今の課題です。
大樹さま周囲への整備は、本来、熟練の管理者及び整備士さんが配属されるのですが、新人が配属されることはないのです。
しかし、今回は、整備主任のルーモ様、上位管理官のレイティア様、古竜さまの意向とのことで、配属替えになったとのことです。
管理補佐官のシャイン様は、「まだ早いのでは?」とのことで反対されたそうなのですが、主任と上位管理官お二方の却下の一言で終わったそうです。
新しい芽の可能性を試したいとのことと何か大切な案件があるみたいなので、それを任したいとのことでした。
その後、大樹の丘の管理整備棟の整備士や管理者の方々から、いろいろな意見を聞き、足りない技術は、大樹さま周囲の整備士皆様の力を借りて、色々と苦労はしましたが、ようやく納得のいく整備が出来きました。
この整備作業の結果を見て、ルーモ主任、レイティア様にシャイン様からも、合格を戴きました。そして、ずっとこの状況を見ていた古竜さまからも満点であると褒められました。この際に古竜さまは、何か一つ決めたような雰囲気をされていました。
それから、月日が流れ、私がここに来て、一年になりました。
学校を卒業してから、丘の地下の生活に慣れるのに半年、整備や視察及び査察補佐を通して、この一年で庭園を知るという大切さを学べたと思います。
それを昇華して、整備作業に活かしていきたいって思う今日この頃です。
今日は、臨時の全体朝礼があるので、いつも通りに大樹さまへ挨拶して、管理整備棟に向かってます。
そういえば、今日は大樹さまにシャイン様もクラ爺の姿が無い感じでした。
整備室に着くと主任の姿はなく、他の整備士さんのお話を聞くと、管理棟の管理補佐官室にいかれてるとのことです。
あと整備室に、向かう際に管理者さんとすれ違って、レイティア様も来てるとのお話をしてました。
でも、昨日の時点で臨時の全体朝礼のみで査察の話はなかったので、何があるのかワクワクです。
周囲の皆様は、なんか嫌な予感しかしないとのことでしたが…。
そうこうして、全体朝礼の時間となり、大樹さまの前に管理整備棟の職員全員が集合。管理者と整備士で別れて整列するとかする様子はなく、とても自由な集合方法でした。
上位管理官のレイティア様、管理補佐官のシャイン様、整備主任のルーモ様が大樹さまの前に立ち、朝礼が始まりました。
そして、大樹さまの下層に古竜さまが、気配と姿を消して、いらしてるみたいでした。
朝礼の進行はいつも通りシャイン様なのですが、いつもと違って真剣な表情でした。
「皆さん、おはようございます。今日は大切な事項が2つあるので、古竜さま並び上位管理官がいらしております。」
「まずは、上位管理官のレイティア様から。」
シャイン様が後ろに下がり、レイティア様が前に出て、お話を始める。
「皆さん、おはようございます。まず、私からの伝達事項ですが、例年通り、
「今回は、区分特区の無いこの大樹の丘に
「例年と違うのは、交換研修は本来3か月なのですが、今回は6か月と長期の研修となります。」
「また、交換研修に来られる方にはお子様がいっらしゃるので、ここの基礎学校に入学されることになります。」
「アニスが来た時の様に特別扱い等せずに普段通りに接することを心掛ける様にお願いします。」
「それと管理官室が不在というのは研修に来られる方々に失礼にあたる為、中央管理局からの辞令で、本日より1年間、私が
「また今回は交換研修期間に際し、
「そして、この
「以上です。では、整備主任から、交換研修で来られる管理整備官についてお話をしていただきます。」
えーっと、何かすごい役職についてしまったのは、私の幻聴かしら…というか幻聴であってほしい…。
何? 特別管理整備補佐官って? 私に何すればいいの? 交換研修生の対応?ご家族のお相手?
私は、一瞬にしてすごく混乱しながらも朝礼は進んで行きました。
レイティア様が後ろに下がり、ルーモ整備主任が前に出てこられる。
「おはようさん。さて、交換研修で来る管理整備官は、上位天族のご家族だそうだ。」
「
「だから、特別扱いせずに接すること。あと管理整備官って役職に聞きなれてないだろうから説明する。
「管理整備官ってのは、簡単に言えば、管理官と整備官の上の役職だ。だから、上級技術、知識、管理官の管理権限と上級整備、整備知識等を持っている。」
「まぁ、ここの査察で管理整備官が来ることは滅多にないし、会う機会もそうそうないから、あまり気兼ねしないように。」
「管理権限をもっていても、交換研修中の管理権限は無効だから、気にしないように。」
「以上だ。何か質問のあるものは? 無ければ、これでわしの話は終了とする。」
皆、交換研修がここで行われること自体、初めてなので、困惑と緊張した様子。
ルーモ主任が下がるとシャイン管理補佐官が前に出て来られる。
「最後に古竜さまからお話があります。心して聞くように。」
一瞬にして皆様に緊張感が走り、竜の威厳に対して精神強化等を行われてる様子。
私は、よくわかってないのと方法をやり方がわからないので、きちんと話を聞くという意識に集中する。
大樹さまの上より古竜さまの威厳のある声が聞こえてくる。
「皆、いつも庭園の管理及び整備、ご苦労。」
「今回、
「敬意と礼を忘れず、見学及び研修中はありのまま技術と情報を伝える様に。」
「それから、人の子であるアニスに
「この大樹の丘で、たった一人の人の子であり、そのことに奢らず、また努力を続けてきた者である。」
「皆も知ってる通り、誰に対しても敬意を払い、礼を忘れず、種族を問わず、平等に接している。」
「この地に来て1年で、まだ拙い面もあるが、整備技術並び管理技術も向上している。」
「交換研修生の区別特区がある天族の方々への対応も問題ないと考える。」
「この機会に
「わしからの話は以上である。」
古竜さまの話が終わり、シャイン管理補佐官が前に出る。
「それでは、本日の臨時朝礼は終了です。」
「では、皆さん、それぞれの業務を開始してください。アニスは、この場に残るように。」
混乱状態のまま、朝礼が終了し、私はこの場に残る。
レイティア様から、お話される。
「そういう訳で、アニス。
「あの、なんで私なんでしょうか? もっと適任の方がいるのではないのでしょうか? 例えば、魔族の方々とかでいらっしゃると思うのですが?」
「うーん、簡単に言うと天族と魔族って仲が悪いのよ。だから丁度、間に入れるのは、人なのよ。」
「でも、私に役職なんて、まだ1年目の新人ですよ。しかも、管理官以上の役職だなんて無理ですよ。」
「これは
「古竜さまに直訴して…って、あの方が
「よく覚えてたわね。そうよ、クラルテ様から直々の勅令だから。」
「わかりました。とりあえず、私に出来ることをします…。」
ここに来て1年目にして、半年の間とは言え、役職になってしまった私。
これから、私、どうなるんだろう。
交換研修は来月からだから、とりあえず、色々と聞いて、準備しないと…。
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