第30話「一ヶ月(表)」
―――竜胆白の一ヶ月―――
楓の魔法講義は約一ヶ月続けると言われた。なぜ一ヶ月あるのかかは後に説明すると言われている。
魔法講義が始まってからもう俺の把握すると四十日近くは経過していた。
「なぁエミリー、一ヶ月って何日。」
現状そんな間の抜けた質問が出来るのはエミリーだけだ。
「えっ、ハクって一ヶ月も知らないくらいの田舎に住んでいたんだね。」
エミリーには元々田舎暮らしだったと伝えてある。田舎暮らしだから金も持っていなかったし、分からないことが多い。そうすればエミリーは何も不信感を感じないだろうと考えた。
そんな事を言わなくともエミリーは何も感じないだろうが。
「えっと、一ヶ月は七十日で、黄、緑、青、紫、赤の月があって一年は三百五十日だよ。それぞれの国と同じ色の月になる時には盛大にお祝いすんだよ。」
このようにエミリーには何度も色々なことを尋ねているが、やはり向こうの世界とは違う。同じ言葉だとしてもこちらとあちらでは意味が違っている事はよくある。
竜胆白としてはこんな風に、エミリーと話をして、楓の所に講義を受けに行き、この国や他の国の事を街の人々や、宿の人から聴き取りしていた。
一応できる限りの黒の勢力の事は聴き取りした。
とは言え、庶民から集められる情報は少ない上に、黄の国と紫の国は直接接しておらず流れて来る情報は少なかった。
どうやら紫の王都を侵略したのは黒の勢力のなかでも国の道化士と名乗る者の率いる仮面の魔法使いの軍勢らしい。
その魔法の制度も高く、使用している武器の魔法展開の時間も短く、付与魔法のかかった弓よりも早く、一瞬で敵を倒すことが出来る魔法具を使うらしい。
魔法を使う者を相手にするのに、楓の魔法講義は役に立つ事になるだろう。
魔法に対して科学技術を使えば恐らく対抗出来る。
しかし、三日目以降から確かにあった、覚えていたという事は覚えている。しかし、思い出す事ができない。
人体の限界へと達してしまった事か、あの時デッドビートの輩にタコ殴りにされた事。どちらかが脳に影響したと見るべきだな。
だがしかし、切り札にするつもりであった科学力を失ったのは大きい。
魔法を使えるようにしておいて正解だった。
一瞬で敵を倒すことが出来る。それに対抗するためには銃器を使いたいのだが、その構造などは全て失った記憶の中だ。
何とかして、自力で考えつかなければならないという訳だな。
その為には金が必要だが、俺はその方の問題をクリアする方法をしっかりとこの一ヶ月で確立することに成功している。
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