第29話「泉谷隼人再誕」

 ―――泉谷隼人が蘇る―――


 楓の講義が始まってから数日、俺はある種の魔法について知る事になる。


「今日の講義はここで行うよ。」

 連れてこられたのは王城の庭だった。

 そして楓はいきなり、ある魔法を使用する。


 高身長の若者であった楓の体は段々と大きくなり、その肌からは鱗が生える。

 そして爽やかな顔はまるで爬虫類の様になり、元より頭に生えていた角は更に伸びた。

 その姿はまさに竜。しかし、楓は竜人の筈ではないのだろうか。


「僕は、いや竜人のほとんどは生まれ持って人と竜の形状を持っている。その形態を変更する時に使われるのが変形魔法と呼ばれるものだ。」

 この魔法を使えば、元の世界の姿を取ることが出来るのではないだろうか。


「ちなみにだが、この魔法を使うには変形先の形態を深く理解していなければならない。更に、変形魔法はとても魔力を消費する。僕の場合生まれた時から二つの形態を保有している為、竜と人の形態の二つを変更するだけならば全く負担にはならない。けど、僕が君の形態へと変更しようものなら、そんなに長くは続かない。」


 そのように、今日の講義で変形魔法を教わった。

 もちろん俺は早速その魔法を使い、竜胆白ではなく泉谷隼人の身体に肉体を差し替えることを考えた。

 その状態でデッドビートに通えば、竜胆白は表の世界を生きる者になれる。

 少し裏の世界を覗いてしまった時期は仕方ない。泉谷隼人の記憶で塗り替えるしかないだろう。


 この世界では竜胆白と泉谷隼人の二足の草鞋を使ってそれぞれの世界に影響力強めていく。これが得策だろう。


 とりあえずまずはその形態を変更してみる。

 もちろんそんな数日で自分の姿を忘れる者は居ない。

 今の、竜胆白は小柄だが、元はもっと高身長であった。

 髪も色はよく似ているが、元々は今のように伸ばし晒された前髪ではなく、中分けで襟足などももっと短かった。

 今の髪型は男の中では長髪だろう。


 身体も、竜胆白の体は細身である。元の世界では筋肉こそが強さに繋がっているのだが、この世界で強いと言われる者はそこまでの筋肉は見受けられない。

 つまりこの世界では単なる肉体の強さが強さに繋がるという訳では無い。


 それは後回しにするとして、今は変形魔法を使用することを優先する。

 もちろん泉谷隼人の身体は熟知している。

 もちろん成功しない訳はなかった。


 しかし竜胆白とは違い、元の泉谷隼人の体は石のように重い。

 一度この体で簡単な魔法の使用に試みたが、それは成功せず、体も元に戻ってしまった。


 今回わかった事は、三日目以降欠落したのか思い出せなかった事柄もこの状態ならば思い出せる。

 魔法に関しては謎が多いのだが、この体であれば俺が失った科学の考えを利用できる。

 だが、この魔法以外の魔法は使用出来ない。

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