第28話「選択肢ゲーム」

 ―――それでも竜胆白は怒らない―――


 このデイザーと言う人間がその過去を話し出す。


「ワシはの、不死者なんじゃよ。それは元々もつ性質ではなく呪いと言うべきものなんじゃ。」

 不死の呪い、物語の中などではよく聞く話だ。


「ワシはとある男の金儲けに利用されたのじゃ。その男は世界でも有数の逸材だったのじゃ。」

 有数の逸材とはつまり、楓などにも並ぶ人間という事か。恐らく何かがあり裏社会に行ったのだろう。


「奴は闇結社ファントムダイスのリーダーをしているレーブンス。奴は選択肢ゲームなる奴なりの金儲けの遊びを行う。」

「元々のレーブンスは、全種類全属性の魔法を使えた。魔法の天才じゃったのに、彼は大きくなるにつれて表の社会に出てこなくなった。そして噂として彼が闇結社で暗躍していると聞いていた。まさか本当じゃとは思わんかったんじゃ。そう、ワシもこやつもその選択肢ゲームに巻き込まれた被害者じゃ。」


 選択肢ゲームと言うのがレーブンスが主にこの二人から怒りか哀しみかをかっているなにかなのだろう。

「選択肢ゲームは言わば究極の質問じゃ。ワシは奴に選択を迫られた。その場で死ぬか、不死になるかを。今ここにいる以上ワシは不死を選んだが痛みも味わう老いる上に、傷を負って死んだと思っても気づけば生き返る。置いた体にとっては地獄じゃ。」


 それに対してエミリーの父親、ジェームズも何があったのか説明してくれた。

「そう、俺も選択を迫られたという訳だ。俺は妻と娘、どちらの命が選択の対象だった。俺は妻を選ぼうとしたが、彼女は娘が死ねば私も死ぬと、俺は娘を選んだ。だからエミリーには幸せになって欲しい。」

 父親の願いと言うやつか。子供などいなかった俺には微塵もわからない事だが。


「レーブンスが何故そんな事をしているのか、ワシはそれを聞いた。奴の趣味は人の悲しむ顔を見る事、絶望しているのを見る事。そして奴は汚職を働く有力な人間を捕まえて、選択肢ゲームを賭け事にして儲けを出す。奴にとっては楽しくて金も手に入る最高の快楽なんじゃ、本当に奴が憎い。あんたもそうは思わんかの。」


 道徳感や倫理観に目を瞑れば、確かによく儲かりそうだ。人の究極の選択と言うのは実に興味をそそる。

 更にそいつらに賭け事をさせることで弱みを握る事も出来るわけだ。

 中々捕まりにくい上に素晴らしい計画だろう。


「確かに腹が立ちます。俺はその被害にあった事は無いですが、考えただけでも腹立たしい。」

 俺はそんなふうに一応賛同する返事を返したが、本音ではレーブンスを、確かに凄いと思っていただけであった。。

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