第27話「好きと言う訳ではない。」

 ―――竜胆白を悩ませる―――


 俺とエミリーは夜になるまで街の散策を続けた。

 今はやることも無いし、一人宿屋の受付の広間で座っている。

 散策であらかたこの国の、この世界の現状について把握した。

 やはり現状この世界に大きな影響を与えているのは黒の勢力だろう。つまりこの世界にて俺が大きな影響を持つためにはその黒の勢力を大きく膨れ上がらせた上でその黒の勢力を侵略、征服すれば俺は英雄と崇められて、この世界で大きな影響を持つ事が出来るだろう。

 ならば、俺は竜胆白であるし、白の勢力とでも語っておく事にするか。


 この世界における陽の当たらない暗い部分は恐らくあのブリングと言う音楽師の置かれている状況の様なことを指すのだろう。

 異世界から来た俺にとっては全く気にもならない事だがこの世界に生きるものにとっては気にせずには居られない問題らしい。


「竜胆白、話がある。娘の事についてだ。」

 受付にいたエミリーの父親から声をかけられた。

「あんたは娘の事をどう思っているんだ。あの娘は俺の大切な宝なんだ。犠牲を払って俺はエミリーを育てたんだ。」


「エミリーの好意は本当だって、この数日でしっかりと理解できた。けど、俺には目的があって、それでここに来たから、もしその目的も全て理解して、それでも一緒にいたいと言うなら止めない。一応今は別にエミリーを好きというわけではない。」


 俺は世界を征服する。今まで元の世界でも弱味にしかならない仲間というものは持たなかった。ただ一人としてブランドを確立してきた。

 なぜ一人にこだわるのか、その理由は泉谷隼人のブランドの人員がもし不祥事を起こした場合それは世界中に情報拡散し、俺のブランド力を落とす事になる。


 もちろん様々な企業と提携してプロジェクトの顔役としてプロジェクトの代表になる事はあった。しかし、今回のデッドビートは何とかして竜胆白の存在を誤魔化したい。

 それを行う方法を探さなければならない。

 裏の組織の主導者等をそのまま続ける訳にはいかない。早いうちに俺がデッドビートに行ってほしい作業を行う組織にするか、何か竜胆白を誤魔化す方法を見つけるかだろう。


「あぁ、お主かのエミリーが運命の人運命の人と騒いでおるのは。」


 その場に居合わせた爺さんが何故か話しかけてきた。しかし、俺はこの人が誰か分からない。

「その人はこの宿をよく利用してくれる。デイザーさんだ。」

 そんな人が何の用だろう。

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