第19話「隣にはお姫様」

 ―――竜胆白への褒美―――


 俺はその直後から、アリア姫立ち会いの元楓の講義を受ける事になった。

「君に魔法の講義をしたいと言ったのには僕としても気になった事があったからなんだ。それを確かめる為に君に魔法を教えようと思う。気になる事が当たっているかどうか判断出来てからそこについてはまた触れる事にする。」


 やはり楓にも俺を利用する目的があっての提案だったわけだ。だが、魔法が何でも使える以上は魔法を学ぶ事は無条件に得にしかならない。

「だけど、どうしてお姫様も一緒に講義を受けているのかな。」


 俺のその質問に隣に座るアリアは俺の肩を軽く叩いて俺を振り向かせてから答えた。

「それは私もあなたに興味があるからです好意があるからです。私を助けてくれたあなたを、楓の固有魔法を使えるあなたをもっと知りたいからです。」


 そう言えばあの火の聖剣は楓の固有魔法なんだな。一度聖霊と呼んでいた物についても聞いてみるか。

「そう言えば聖霊って言っていた物は何なんだ。」

 楓は腕を組んでから話し出す。

「僕自身も詳しくは知らないのだけど、僕には赤い光の玉として視認できてるよ。僕は見えない物も存在としては確認できるんだ。君が飛ばしていた何かも僕には視認出来ていたよ。」


 城に潜入していた事に気づかれていたのだから、俺があの時真っ先に誘拐を疑われた訳だ。

「あれは、お姫様が抜け出すタイミングを知る為に飛ばしていたんだ。まぁ、サーヴァントって思っていて。」


 苦し紛れのような気もするが、楓もここは何も言わないだろう。

「だから、私が逃げ出そうとするタイミングが分かったのですね。」

 アリア姫がすかさずそう言った事で、楓はもし何か言おうとしていたとしてもいい辛くなったのだろう、何も言って来なかった。

「あはは、そういう事だったんだね。本当に疑っていてすまない。」


 そうは言ったものの楓の雰囲気からしてまだ完全に信用はしていないが、攻撃性は見受けられないと言うところだろう。

 とりあえずこの楓の警戒心については時間をかけて溶かしていくか、もし不可能そうなら王族に取り入るのを諦めるしかないだろう。


 この講義というのも講義と言う大義名分を付けた監視なのだろう。

 ここで監視されるのはまずは俺の魔法への知識と、そして俺が何か国に負をもたらそうとしているかだろう。

 もちろん俺に魔法の知識はない。あるのは知れば全ての魔法が使える特権、この世界トップクラスの身体能力。


 楓のスピードは勿論今でも覚えている。今もう一度楓の人達を浴びせられても対応できるだろう。


「じゃあそろそろ講義を始めて欲しいな。昼からは行かなければならない所があるんだ。」

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