第18話「黄色の王」
―――竜胆白に褒美を―――
俺はデッドビートに潜入した事を伝える為に城へ向かった。
そこで俺は想定していた待遇にあう。
門番に楓を呼んでくれと伝えればすぐに理解され、俺は客間に通された。
「はい、楓様よりお聞きしております。黒髪の竜人に似た人が来るはず、くればお通しする様にと。楓様を呼んで参りますので、もう暫くお待ち下さい。」
楓にもう一度来ると言ったような、言っていないような気もする。どっちにしろ門前で長い間待たされる事はなかったから、それは良かった。
「お待たせしたかな。一応もうすぐ君が来るんじゃないかなと思っていた。だからこの部屋の近くに居るようにしていたからあまり待たせては居ないと思うのだけど。」
そう言いながら楓はすぐに現れた。
「さて、まずは王が君を呼んでいるんだ。だから君には王の部屋まで行ってもらいたいのだけれど。」
王の用とは、昨日の件についてだろう。もし姫を連れ出した事がバレていれば俺は恐らく王より何か罰を与えられる。
しかし、楓の様子からしても連れ出した事がバレている訳ではなさそうだから、何が礼を言われるだろう。
そこから王に取り入れば表の世界の支配にも近付く。
「着いたよ。ここが王の部屋だ、今扉を開こう。」
開いた扉の先の部屋の奥にある椅子に王は腰掛け、街の風景を眺めていた。
楓が扉を開いた事に気づき、王は椅子を回転させ、こちらへ体を向けた。
「君が私の娘を救い出し、デッドビートの頭領を捕獲してくれた少年だね。名はなんと言うのかな。」
やはり連れ出した事は何も言われていない。
あの姫は俺を信用して、万が一にも俺がわざと誘拐させるために姫を外に連れ出したとも思っていないようだな。
「俺の名前は竜胆 白と言います。」
一礼をしながら俺はそう名乗る。見た目は子供な訳だし、あまり丁寧なのも警戒を招きそうだろう。
「竜胆白と言うのか、赤の国の名に似ているが、我々の様に名が分かれているのだな。それはさておき、娘を救い出して暮れた褒美は何が欲しい。」
この問いかけ、ここはあくまでも謙遜すべきだろう。長い目で見ればここで欲を張るよりもここは何も求めないべきだろう。
「いいえ、俺は利益の為に助けた訳ではありません。なので褒美は要りません。」
その言葉に返答を返したのは王では無かった。
「でしたら、僕に一つ案があるのですがよろしいですか。僕が彼に魔法を講じて差し上げたいのです。」
王はその提案にすぐに応じた。そして、俺の今度の姫の救出の褒美は、楓からの魔法の講義を受けるという事になる。
確かに、相当な戦闘能力があるこの楓から魔法を教わるのは素晴らしい戦力強化に繋がるだろう。
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