第9話「姫を連れるリスク」
―――竜胆白は遭遇する―――
看守役が姫のいる牢屋から居なくなるのを伺って、俺は姫の居る檻の中へと転移する。
「お姫様、逃げたからこうなったんだ。」
本当に呆れる。逃げ出してすぐに捕まっている訳なのだから、本当に呆れてしまう。
「まぁ、助けに来たから安心してくれ。俺を信頼してくれないならこのまま帰っても良いけど。」
戻る為に転移魔法は発動させているので、置き去りにしてすぐに帰ることも出来る。逃げた事を謝って貰わないと連れて逃げたくもない。
「分かりました、あなたを信頼する事にします。」
まぁ、謝罪なんて、姫が容易くしていいものでもないかも知れない。姫が謝罪しなかった分は後で王から御礼を貰うから問題ないが。
「その手錠の鍵はないから、それは城に帰ってからどうにかしてくれとだけ。じゃあ、この転移魔法で転移してくれ。」
姫をすぐさま転移させ、俺もその後を追った。
その後は俺が着ていたコートを姫に着せて、手錠を隠しながら、ゆっくりと裏道を通って王城へと向かっていく。
そして、城の近くの広間、焚き火を焚いている場所の近くまでたどり着いた。
「もうそろそろ、城だからお姫様一人でも行けるね。俺はこの後奴らのアジトに行ってくる。あわよくばお姫様のその手錠の鍵も探して手に入れられるか試みるよ。じゃあまたね。」
そう言って姫を送り出す。後は、奴らのアジトを叩いて奴らを破滅させるだけだな。
そう思ったのだが、そう上手くはいかないのだった。
「あ、そう言えば、あなたは私の名前をご存知ですか。この国の人では無さそうですが。」
全く分からないが、覚えておくべき事だろう。
「確かに、俺はこの国の人じゃ無いね。だから、お姫様の名前は知らない。教えてくれるのかな。」
ニコやかに微笑んで居れば何とかなる気がする。今は美系の十九歳だ。日中宿屋で鏡を見た感想は中性的な見た目で、微笑んで居ればモテそうな爽やかな容姿だった。
微笑んでいる竜胆白の中身が泉谷隼人とは思ってもいないだろう、可哀想に。
「私の名前は、黄姫のアリアです。五色の姫の一角黄色の姫です。そうそうあなたが他国の方である事が分かったのは、私には楓と言う付き人がいるの。その楓によく似ていたの。楓は赤の剣と呼ばれる英雄の末裔なの。」
その話を聞いた刹那、何者かが俺の肩に手を置く。後ろから感じる気配のそれは、何かの獣いや、気配から連想出来るのは蛇、蜥蜴、そうではない、竜だ。竜に睨まれている。
「僕がその楓だ。少し君に話があるんだ。」
とてつもない気配に気圧されていた。
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