第8話「竜胆白の失敗」

 ―――竜胆白はたどり着く―――


 姫を連れて、俺は転移魔法で街へと移動する。

「流石にお祭りだけあって賑わってるね。」

 何も会話をしないのもなんだし、そんなことを言ってみる。

 流石に警戒しているのか、姫は寡黙だ。どうすれば心を開くだろうか、暇をして帰りたくなってしまってはいけないだろう。


「そうだ、さっき向こうに寄ってみて良いと思った店があるんだ。一緒に行こう。」

 返事を返さない姫にそう語りかけて、俺は確かその店があったであろう方向へと歩き出す。


 そして、振り返った時に姫は俺が歩き出したのとは全くの逆方向の人混みへと逃げ込んで行く所であった。

「しまった、油断した。」


 姫はずっと俺が油断するのを見計らっていたみたいだな。

 完全に油断した。俺が奴らの仲間で無いことを証明するのを忘れていた。

「ちょっと待つんだ。そんな格好でうろつけば見つかってしまう。」


 俺はすぐさま追いかけはした。追いかけはしたのだが、アイツらを撒いているだけある、すぐに逃げられてしまった。

 早く見つけないといけないが、この人混みでは思うように進めない。すぐに思念体を飛ばす。


 上空から街の至る所を捜索する。早く見つけなければ、俺は姫を餌にした訳だ、その餌を食い逃げられる訳にはいかない。

 白いフードの金髪の少女は見つけるのが楽だろうと思ったが、この広い街では見つけるのが容易ではなかった。

 祭りをやっている会場のどこにも見当たらない。


 しかし、他に見つかった者が、姫を追っていた奴らだ。人数は二人だけ、一昨日はもっと人数が居た。つまり奴らはいくつものグループに別れて行動している。

 そして、この二人は祭りの会場ではなく人の居ない街外れへと向かっている。


 これは見つかってしまったと見ていいだろう。

案の定そうであった。

「さて、どうやって俺らに気付かれずに外に出られたかは分からねぇがまぁいい、早くアジトに連れて行かねぇとな。これで計画は完璧、身代金は俺達のものだ。」


 やはり、奴らに見つけられていたみたいだな。まぁ、このまま敵について行けば奴らのアジトを発見できる。そこを叩けば敵を一掃できて、王国自体にも借りが作れるだろう。

 俺が起こした失敗を収集すれば俺は元々得るもの以上の物を得られるだろう。


 しばらく時間が経ち、奴らは全員この街のハズレにある森の中の洞窟に入って行く。ここがアジトだろう。そしてお姫様はそのアジト内の牢屋に入れられていた。

 さてと、じゃあ奴らの計画とやらを阻止しに行くか。


 お前らが得る気の身代金は俺がお礼金として貰ってやるから安心しろ馬鹿ども。


 竜胆白は単騎侵攻を始める。

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