第7話「姫の誘拐」
―――竜胆白は誘拐する―――
流石にずっとエミリーと一緒に行動し続けていたら何も準備できない為、俺はまだエミリーに「俺はやる事があるから。あまり束縛すると男の人に嫌われるよ。」
そう言えばすぐに、立ち去った。恐らくエミリーにはこの言葉がよく効くが、どうしてもの時にしか使ってはいけない。なぜならこういう言葉は使いすぎればすぐに相手からの印象が悪くなる言葉だからだ。
もちろん流石にいつか成功して返すつもりではあるが好きな物を買えば良いと、エミリーの父親から金を貰った。
それで服を買った。魔導衣らしいがただの白いハイネックコートにしか見えない。
そんな魔導衣を着て、俺は夜遂に姫の元へと向かう。
日が沈む位から物音もしない街のはずれで思念体を飛ばし、の動向を伺う。
そして日が沈み、街が祭りの灯りに照らされた頃の事。
「さて、ルートは完璧、出発進行。」
小さな声で姫がそう呟いたのを聞き、俺は姫の部屋の中に転移魔法を展開する。
「こっこれは一体。」
いきなり俺が現れたら驚いて声を出してしまうと思った為、一度転移魔法の展開だけを行う。そして、それが転移魔法だと気づく頃に転移魔法を使って姿を現す。
これで人が現れること自体には驚かない。
「お姫様、俺とデートしませんか。」
とりあえず一言目はそんな言葉にした。
「あなたは誰ですか。それにどうやってここまでやってこれたのですか。」
そう聞かれることは百も承知だ。そして、こんな怪しい人間とでも共に出歩くしかない。
「そのお姫様が羽織っているマント。五日前に路地裏の角ですれ違っている。君がどうやら外で何者かに狙われている事も知っている。だから、俺が護りに来た。ここで声を出して助けを呼んだらお姫様はここから出れなくなる。俺はそれでも護るって目的は果たせるから問題ないんだ。」
本当の目的はこの国の姫を狙う輩には借りがあるため、俺は姫の前でそこを叩く。そして、姫に借りを作るというのが計画だ。
「あなたの要望を呑むしか手はないようですね。分かりました。」
呑まなければもう外へは行けない訳だからそういう事は予測していた。
「そうだ、護ると言っても奴らが襲ってきたら、それを退治するだけで、奴らを拘束することはできない。そうすればお姫様が外にいる事が割れてしまうから。それだけ覚えていてくれ。」
この姫の馬鹿だ。この間と同じ格好で外を出歩けば、必ず敵に見つかってしまうだろうに。それはさておき第一段階は成功した。アイツらは必ず倒す。そして姫を通じて成功する。
完璧な計画だ。
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