第4話「助けた理由」
―――泉谷隼人は驚愕する事になる―――
思念体を飛ばす魔法で、上空から街の全貌も把握したから、これで迷う事はないだろう。
更に、城の使用人を追い続けたお陰で姫の居る部屋も割れた。日が沈む頃から、姫を追って転移魔法で姫の元まで転移する事にする。
それはそうと、全く目覚める気配のないこの娘を起こした方がいいと思った。流石にこの体勢で寝ていては具合が悪くなったり、体が痛くなったりするかも知れないからな。
「ねぇ君、もうそろそろ起きてほしいな。」
軽く肩を揺すりながらそう繰り返し語りかける。
「ん、うぅんはっ私いつの間に寝てた。ってあっ君いつの間にか起きたんだね。」
起きた瞬間は半目を開いて眠そうにしていたのに、目が合った瞬間に驚くほど目覚めたみたいだし、これなら話せるか。
「助けてくれてありがとう。」
まずはこれだろう。流石に俺は命を助けられた事は理解しているし、自分ではもうどうする事も出来なかった訳だ。とはいえ、その治癒魔法がどんな物が分かれば、もうこの娘に頼る必要もないだろうが。
「うぅん、全然大丈夫だよ。私が好きでやった行為な訳だし、感謝されるまでもない当然の行為だよ。」
困っていたら助けるのが当たり前。それは正直馬鹿の考えだとは思うが、その馬鹿に救われた以上これまでの様に完全否定は出来ないな。馬鹿も時々役に立つと、覚えておく事にする。
「それはそうと、どうしてあんなのに絡まれていた俺を助けてくれたんだ。」
そう尋ねたのだが、その質問を聞いてこの娘は少し固まり、そして俺の両手を握る。その状態でジャンプして、ベッドの上の俺に飛び乗る。
「ねぇ、理由を聞いても逃げないでね。絶対に逃げないでね。」
普通の理由ではこんなふうに手を握り、体を押さえつけてまで理由を言う奴は居ない。
理由次第では、この娘を押し飛ばしてでも逃げる。
「うん、絶対に逃げないよ。」
逃げる気があるとは言え、逃げないと言わないと理由は言わないだろう。
「分かった逃げないなら、じゃあ言うね。」
手を握っているこの娘だが、手汗をかいている。何か緊張しているのか。現状から身の危険は感じない。
「えっとね、君を私のものにしたかったの。私君のその顔がとってもタイプなの。」
そういう事かって待て、意味が分からないどういう事だ。
「えっと、えっそれはどういう。」
鏡を見た事もない俺には俺の顔がどうなっているかも分からない。
「君ってとっても竜人に顔つきが似てるでしょ。私はなんて言うか竜人の顔つきが好きなんだけど、目だけがちょっと怖いの。だけど、程よく私竜人ぽさを出してる君の顔がとてもタイプなの。」
理由を聞いてみたが、一切分からなかった。まず竜人って何なんだろうか。
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