第3話「差し伸べられた手」

 ―――泉谷隼人は目が覚めた―――


 木造の建築物の中、暖かい色の木材の壁。俺はベッドの上に横たわっていた。

 確かアイツらに絡まれて、それで倒れてしまったような。


 ここは何処なんだろう。俺はそんな事を思っていたのだか、まず気づいたことがある。身体のコンディションが完璧なのだ。

 まさかまた死んでしまったのか。この異世界に来て三日で死んでしまうとは思ってもいなかった。


 いや待て、俺はまだ死んでいない、そんな気がする。一度死んだ時には、俺はあの白い部屋に連れていかれた。もし死んだとしたら何故またあの部屋に行かないのか、そして何故あの女神は現れないのか。最後に生死には関係ない事だが、何故娘が俺のベッドの隣に座り、そのまま俺に被さって眠っているのか。


 次に俺は娘と反対側に置かれているテーブルの上に水が置かれてある事に気がついた。

 流石に少し喉は乾いていた。その為、グラスに注がれた水を俺は勢いよく飲み干す。久しぶりに何かが喉を通る感覚を味わった。

 丁度その時、外から話し声が聞こえてくる。


「はぁ、全然戻って来もせず、ずっと看病しやがって、おーい入るぞバカ娘。」

 扉が開く。扉を開く前の呟きの内容から、恐らくこの娘の父親だろう。

 とりあえずこの娘は眠っているから、その父親から事情を聞くことにする。


「あ、あんた起きてたのか。」

 一瞬驚きはしたが、恐らく俺がもうそろそろ目覚めることは見当が付いていたのだろう、すぐ冷静に話し始めた。

「何があったか、教えて貰ってもよいですか。」

 あの後の出来事が分からない以上は、どうする事もできないだ。早く教えるんだな。


「てめぇがあの悪党どもにやられて倒れてる所を家の娘が見つけてここまで連れてきて更には、起きるまで二日目ずっと治癒魔法で看病していたんだよ。てめぇは俺の娘に感謝するんだな。」

 あの日から二日目経ってもう五日目か。随分と長い間寝込んでいたんだな。

「彼女が目覚めたら、ちゃんとお礼を言おうと思います。」

 ここはしっかりと真摯な返事が好まれる場面。子供でもわかる事だ。


「とりあえず、これは娘の飯だから、起きたら伝えてくれ。てめぇの分の飯も作ってやるから待ってろ。」

 こちらに歩きながら、この親父は話し、グラスが置いてあるテーブルに娘の分の食事を置くと、元々置いていたグラスを手に取り、そのまま部屋を去る。


 さて、そう言えば、アイツらが話していたのは今夜の事だろう。この娘で身動きが取れない今、一度女神から奪った魔法を使って見ても良いかも知れないな。


 体から自分が離れて行くことを想像する。そうすればすぐに女神が使っていた魔法が使えた。この魔法ならここにいても十分に街中を調べられる。初めからこれを使えばよかった。

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