第4話「転生すらも取引」

 ―――泉谷隼人は強欲なのだ―――


 何故かこの女の中で俺が異世界に行く事が確定事項として認識されている。だがしかし、俺はまだ行くとは一言も発していないのである。


 この女が異世界の説明を終えた後から、俺は勝負を仕掛ける。

「貴方に行ってもらう異世界は簡単に言えば貴方達の世界で言う所のファンタジックな世界ですね。ファンタジックな世界で通じますか。」


 もちろん知っている。俺は日本人であるから、それは創作物の中でよく使われるジャンルである事も把握しているし、日本が世界に誇っている技術や文化である以上、把握しているのは当然だ。

「知っている。簡単に言えば魔法なんかが存在する世界だろう。」


 そして、魔法技術が進んでいれば、その分科学は進歩しない。俺のアプローチ点は科学技術。

 ファンタジーの世界観でよく中世をイメージさせる建築物などが多いのは、科学と言う人でない物に頼った技術がないからだ。


「理解している様でしたら話が早いですね。とりあえず、貴方はそのファンタジーの世界に行ってもらいます。貴方自身では無く用意できる体は十九歳の少年の体です。一応言うべきことはこれだけかと。」

 十九歳、今の衰え始めた体よりは良いな。しかし、異世界に行ったとして十九歳の人間の行動など演じれるのだろうか。しかし、もし戦闘等があるとすれば若さを取る方が良いだろう。


「全て理解した。」

「では、あの扉を開けた外はもう異世界です。どうぞ行ってらっしゃい。」

 さぁ、計画開始。この女の出方次第だ。

「俺はまだ異世界に行くとは一言も行っていない。」


 返事に応じて俺はアプローチを変更する。この女が俺に異世界に行ってほしいと思っているなら強気に、思っていないなら下手に出て要望を叶えさせる。


「そっ、それは困ります。貴方には行ってもらわないと。」

 完璧だ。この女は俺を異世界に行かせたがっている訳だ。なら、一番話は早いな。俺は最高の状態で異世界に行ってやるさ。


「叶えられるなら、叶えて欲しい事が二つ。俺は、魔法を知らないし、それは向こうの世界で負い目になる。だから、魔法の使い方等が分かれば、それを使えるようにして欲しい。後は、向こうの世界を知らないため身体能力の上下関係を俺が十九歳の時の元いた世界と同じ位の立ち位置に置くことは出来るか。その二つが叶えられるならば、俺は異世界に行こうと思う。」


 女神だと言うのだから、それくらいの事はしてくれよ。

「分かりました。確かに環境に適応出来ませんもんね。もう、貴方は貴方が言った通りの状態になっていますよ。」


 とても完璧だ。十九歳の時俺は世界で活躍する格闘家だよ。俺より身体能力が高いヤツなんてほとんど居なかったんだよ。更に俺は魔法が何でも使える。


 俺の冒険はここから始まるんだな。

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