第3話「異世界の証明」

 ―――泉谷隼人は死んでいた―――


 さて、この女神を自称するこの女は異世界へ行く事を提案した訳だが、何か裏があるのだろう。


 まず俺が死んでいないと言う可能性も無いことはない。確かに死んだと言えば納得がいくが、その状況を作り出せるかも知れない。俺は世界の全てを知っているわけでは無いし。


 そして、俺の人間性を観察する為になら、モニタリングをする理由が生まれる。

 これによってさっきこの女が直ぐに入ってきた事にも納得がいく。

 そして醜態を晒した場合、その映像を世界に放映すれば社会的に泉谷隼人を殺す事も可能だろう。


 つまり俺はここでも表の顔を演じる必要がある。

「異世界ですか。この世界しか知らない俺は異世界があるとはにわかに信じ難い。何かで証明はできるのか。」


 この女が異世界を証明するまでは演じ続けてやろう。

「そうですね。これならどうでしょう。」

 女がそう言った直後、俺の目の前の空間が円状に歪み始める。そして、どこかは分からないが、何か風景が見え始める。


 その風景は確かに魔法の様な概念を使っている人間が見えるが、それは映像技術で作り出せる。その風景は問題では無い。


「これが異世界です。そして私は女神。これで証明できましたか。まだ納得のいかないようですしたら、思う存分考えていただいて良いですよ。」

 俺の知る科学力では、何も無い状態で空間を歪め、更にそこに風景を映し出す事は不可能だ。この白い部屋がこの女の言う事と、この女自体の信憑性を高めている。


「分かった。その異世界を信じるしか内容だな。この世界がどんな世界なのか気になる。」

 ここはより多くの情報を引き出す為に、さっさと話を進める方がいいのだろう。それに、少し信憑性を増しているこの女の話は聞かなければならない気がする。


 そして、最後にこの技術を褒めればこいつらもヘコヘコと俺を許すだろう。何故なら成功は約束される訳だ。ふふっ。


「では、これから異世界にので、どんな世界か説明しなければいけませんね。」

 この女今墓穴を掘った。俺はこんなセリフを言う事を待っていたんだよ。


 この女は今と、そう述べた。一度目に言ったことと、矛盾が発生している。つまりこの女が何か嘘を述べている可能性が生じた。


 もし本当に異世界があって、俺がそこに行くのならば、これから取引をする。

 そして最高の状態コンディションで異世界に言ってやるさ。


 さぁ俺に踊らされろ、女神を道具にしてやる。

 馬鹿みたいに笑顔を浮かべやがってこの阿呆が、勝つのは俺なんだよ。可哀想等と哀れんだ事を許して居ないんだよ。


 確かに可哀想だが、それを思っていいのは俺自身だけなんだよ。

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