第4話最悪の始まり

「はあ、はあ、はあ。」


一瞬の静寂の中、心臓の鼓動と呼吸音が聞こえる。

大きなファンファーレ音が響きボス討伐のゴールドと経験値、アイテムが表示された。

そして・・・。


「か、か、勝ったぞーーー!!!」


「「うおおぉぉぉおおおお!!!」」


と一人のプレイヤーが歓喜の声が響くと瞬く間に周りのプレイヤー達に広がった。


「お疲れ様。」


「そっちこそ、お疲れ様。」


と言い立ち上がった。


「お疲れ様でした。ユウさん。」


「タツヤさんもな。」


「タツヤーーー!」


と遠くからシズカが走ってきていた。


「お疲れ様。」


「シズカもお疲れ様。」


「後、ヘキヤもね。」


「ああ。タツヤ、シズカ、お疲れ。

それと、ユウさん、レイナさんもお疲れ。」


「ヘキヤさんもシズカさんもお疲れ様でした。」


「うん、お疲れ。ユウ君、レイナさん。

二人とも凄かったね。

二人がいなかったら負けてたかも。

ありがとうね。」


「俺達は特にしてませんよ。」


「ええ、私達は特に何もしていません。

しかも、この人は前衛にしゃしゃり出て陣形を乱してたことですしね。」


「いや、あれは皆んなを守ろうとしてだな。」


「くすっ。」


とタツヤ達は笑い始めた。

この場の空気は歓喜に包まれていた。

だがその時メッセージが届く。



AINo.28様へ


ープロジェクト セカンドワールドー


プロセスワン〈世界の創生〉完了を確認。

これより現時刻をもってプロジェクト〈セカンドワールド〉を開始する。


ようこそAIの諸君。

ここが君達が望んだ希望と絶望の世界。

第二の現実、〈ライフ・オンライン〉の世界だ。



メールが届くのと同時にボス部屋の光が赤く染まり始めた。


「おい、あれ!」


と一人のプレイヤーが指した瞬間周りからいくつもモンスターがポップする時のようなエフェクトがいくつも発生した。

その場のプレイヤーはすぐに剣を構えたが光から現れたのはプレイヤー達だった。光から次々とプレイヤー達が出現しボス部屋はプレイヤー達に埋め尽くされた。

そして、プレイヤー達の出現が止まるのと同時に天井から光の粒子が溢れ落ち光の粒子が凝縮し一つの個体を作り上げた。


「っ!?」


現れたのはついさっき倒したはずの〈The beginning of the world〉だった。

そして戦いの中一度も声を発していなかった声を発した。その声は変声機を使っているような声だった。


「初めましてプレイヤーの諸君。

私はこの世界の創案者でありこの世界の管理者だ。

これより君達にクエストを授ける。」


するとメニュー画面にクエスト受注したと表示された。

クエスト名は〈セカンドワールド〉

内容はゲームクリア。


だが、この場の全プレイヤーがある一点に目が止まったのだろう事がすぐにわかった。

目が止まったのは報酬内容だった。


「どう言うことだ。」


報酬はログアウト権利。

ただそれだけが表示されていた。


「君達はこれからこの世界、第二の現実とも言えるこの世界でゲームをクリアするまでログアウトする事を禁ずる。

ゲームを始める前に一つこの君達に不要な者を排除しよう。」


そう言うと〈The beginning of the world〉は悠馬を見た。そして手をかざすと手から黄金の鎖が伸びる。

鎖は一直線に悠馬を目指して襲い掛かってきた。


「な!?」


悠馬は剣を素早く上段に構えた。


「ふっ!!」


剣と鎖が衝突した。

だが衝突した瞬間とてつもない衝撃波により悠馬は吹き飛んだ。悠馬の後方にいたプレイヤー達に次々衝突し悠

馬は地面に着いてからも二度跳ね、地面を転がった。


「ぐっ!!」


悠馬が立ち上がろうとした時、悠馬の身体は動かなかった。

気づくと体力ゲージに麻痺のアイコンが表示されていた。悠馬が立ち上がらない間鎖は凄まじい速さで接近しそして悠馬の胸の中心に突き刺さった。

だが体力ゲージは減っていなかった。

その代わり胸の中心から一つの光の玉が引きずり出された。そして悠馬はその光の玉の中にいた一人の妖精姿の少女に叫んだ。


「アイ!!」


「ユウさん!!」


「アイ!手を!!」


麻痺状態の中悠馬は必死で手を伸ばした。

アイも全力で手を伸ばす、

だが伸ばした手は触れる事なく鎖は勢い良く〈The beginning of the world〉の手に収まった。


「では、プレイヤーの諸君ゲームクリアを目指して頑張ってくれたまえ。」


と言いアイごと〈The beginning of the world〉は光に包まれ爆散した。


「ア、アイ?アイ!!!!」


と叫ぶご返事は返ってこなかった。

悠馬が叫ぶ中他のプレイヤーは今の惨劇には一切興味を示さず他の事に注目がいっているようだった。


「ログアウトコマンドが発動しないぞ!

ボタンの方はどうだ!」


「だめだ!ボタンも消えている!」


その後その場のプレイヤーは混乱の渦に襲われていた。

泣きじゃくる者、喚き散らす者、その場で崩れ落ちる者がいた。

そんな中、悠馬は地面に膝をつきただ茫然とすることしか出来なかった。



・・・


気づくと俺は知らない場所にいた。

知らない天井が見え、俺はベッドに横になっていた。

それで何処かの宿屋だとわかった。

外はまだ暗かった。


寝ていたのか?

ならどうして自動ログアウト機能が発動しなかったんだ?

ああ、そうだった、俺はゲームに閉じ込められてたんだっけ。


試しにログアウトと言うが反応がなくメニュー画面を開いてもログアウトボタンは消失していた。

しばらく天井を見上げているとあの時の出来事が脳裏に浮かんだ。


「っ・・・!

アイ・・・。」


今の時代殆どの家には両親が不在など良くあることだ。

そして、俺は兄弟もいなかった。

友達もろくに作ることができなくて部活動や委員会の時以外は一人だった。アイと出会うまでは。

兄弟ってこんな感じかなと思いながら一緒に過ごした二年間は楽しかった。

初めてあんなにも信頼できる友達ができるのも初めてだった。

なのに俺は・・・。

仮想の涙が止めどなく流れる。


「うぁぁああぁあ・・・。」


幼い子供に戻ったように情け無く俺は泣いた。

心臓が握りつぶされているみたいに苦しかった。

嗚咽を吐き顔がくしゃくしゃになるまで泣いた。


・・・


泣き疲れ俺はまた寝ていたらしい。

外は薄暗いが明るくなっていた。

俺はベッドから立ち上がりメニュー画面を開き愛剣である〈ウルフズ ブレイド〉を装備し部屋から外に出た。

マップを開き位置情報を確認する。

俺は無意識のうちに第二のエリアの最初の街に来ていたらしい。

マップに俺が歩いた形跡としてマップが開拓されていた。

適当にNPCにクエストボードの位置を聞きクエストボードに向かった。

まだ早朝だからプレイヤーは一人もいなかった。

クエストのアイコンに指先で触れクエスト画面を呼び出した。無数にクエストが表示される。

いつもならアイが厳選してくれたがアイはもういない。

また涙が溢れそうになり頭を振り泣きたい感情を振り払った。

一つ一つクエストを確認しクエストを受注し悠馬は第二のエリア初のクエストに向かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ライフ・オンライン 安田 セン @ougi6844

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ