君に届ける ~無気力女子が部活に入ったようです~

くぁるつゆっお

1






ーー ー ジリリリリ





昨日の夜セットした目覚まし時計、うっとおしい。

ものすごく、鬱陶うっとおしい。

そもそも、朝に 起きなければならない事がおかしい。横暴だぞ

しばらく学校への訴えを言葉をつむぐと、急に馬鹿らしくなって大人しく時計を覗いた。

8時40分だった。············What


私の通う学校の入学式は9時からだから、後20分で学校に到着することは到底無理だと言える。いくら家から1番近くとも、こんな都会の田舎なのに20分で学校いくのは無理! 寝よう。 今日はもう無理だ、寝よう今から20分間ダッシュしても間に合わないよ。逆にどうしたら──徒歩30分の獣道、しかも周辺にはバスどころか電車もない──20分で着くのか知りたいね。

どうせ遅刻なんだし、今から行って怒られるよりマシでしょ。寝よう。



──まだ寒さがほんのりと残る春なのだ、おふとぅんが無かったら今頃ガチガチに固まっていただろう。



おふとぅんは神すぎる。あぁ、おふとぅんにくるまって寝たら幸せだろうな。なのに、ここぞとばかりに私の中の天使と悪魔が対立している。って、おいおい。



私の中の天使:「サボっちゃダメよ、光ちゃん。今すぐに準備をして行きましょう。」



私の中の悪魔:「いいじゃねーか光、どうせならさぼっちまおーぜ!」



天使:「ダメよ、悪魔! ちゃんと学校に行かないと!」



悪魔:「へっ! 学校なんて行っても行かなくても光の馬鹿は治んねぇーんだよ!」



…………

メンタルはダイヤモンド以上を自称している私でも、自分に罵倒されちゃたまったもんじゃない。

あ、メンタル強度の話ね。

私の精神力だけはそんじょそこらの坊主には壊せないほど硬いよ、石投げられて罵倒されても平気だもんねー。嘘です調子こきました、本当は隅っこで泣いてます。


ていうか、私そこまで馬鹿じゃないぞ、普通の人間と頭の作りが違うだけなんだよ。

私はけっして馬鹿じゃないかんな くどいようだけどもう1回いうぞ。

私はけっして馬鹿じゃない。

周りが良すぎるのが悪い。

でも、確かに私の頭は残念な作りになってるよ。

もっとも、幼馴染が天才だから私は別に勉強しなくてもいいと思うんだよね。

テス勉は一夜漬けで天才に教えてもらうと、赤点ギリギリは取れるし──教えてもらえない時は赤点どころか1桁って、それなんて悪夢──大丈夫。それよりも、だ。私が予想していたテスト範囲を大幅に間違えた時の絶望感の方がやばい。

必死になって単元と範囲を勉強して珍しくも予習したりして復習もバッチリしたのに、いざテストが来てみればそこは予想範囲と大幅にズレていた。

対極なのか、対極だったのか······。って言うほど掠りもしてなかった。

もちろんそのテストは宝箱に永久保存して、だれにも見せられないようにしている。

誰かに見られたら多分叱られる。ご勘弁、あれが私の精一杯


ふと時計を見たら、もう5分もたってた。それほど思考に浸ってたんだな。我ながら関心するくらいどうでもいいことを考えられるんだな。ほんっと、尊敬するよ。

さて、そろそろ着替えようか。



「制服…どこやってたっけ」



おーまいがー

着替えようと思ったのに、制服は見つからない。どこだし。制服よ、勝手に動くんじゃないぞ。



「あーあった。」



3分程探してやっと見つけた制服はおふとぅんにあった。そういや昨日楽しみすぎて制服と添い寝してたんだっけ。我ながらなんという見落とし、すぐ隣の布にも気付かないなんて。



「······あれ? 制服姿の私可愛いな……」



鏡に映っていたのは黒の清潔ブレザー、白の純白シャツ、茶色の膝上スカートを着た茶髪の美少女だった。………ふっ、 我ながらなんてナルシスト。

誰かに聞かれたら「しっ! 見ちゃいけません」とか言われそうだな。誰もいなけど、つらいなぁ。



泣きながらの渾身の決めポーズを鏡の前で決めた後、鏡の中に映る自分を見た──ちなみに渾身の決めポーズは手をチェックマークにして左右を定位置に動かすと出来る。何かと有名な「月に代わっ〇お仕置きよ」だ。──やっぱり可愛い。

その間、約私は鏡の中の自分を眺めているだけなのに、入学式までの時間は刻一刻と迫ってきていた。

どんだけ自分好きすぎるんだと同時に時止めの能力が切実に欲しくなる。

これ間に合うかなぁ? ま、どう考えても間に合わんけどねぇ。落ち着いて行きましょー。

と開き直る自分もいた。

遅刻を覚悟して開き直った私はゆっくり、それまたゆっくりと学校の支度をし、朝の食事タイムに突入しようとして1DKの狭い部屋のキッチン脇にある小さな冷蔵庫を開けた。


「…………!? 卵だけ───」


その冷蔵庫の中には、食べられる物は卵だけくらいしか入っていなく、後他には飲み物とか調味料とかだった。

流石に卵だけはないだろう、自分。女子力のしの字も無いぞよ、自分。

帰りにスーパー行かないとなーと思いながらも朝ごはんはどうしよっかなーと呑気なことを考えて私は、女子力の欠片すらもない自分の家の冷蔵庫を閉め、朝ごはんは卵かけご飯にしようと決める。


実家から送ってもらった『ピノキコマチ』というオリジナル米を炊いた炊飯ジャーの中から、お茶碗いっぱいのご飯を持って卵を落として、自慢のキッコ〇マン醤油を掛けた。

これが私の至福の時、誰にも邪魔されずにご飯が食べられる。

なんて幸せなのだろう、一人暮らしでよかったな。


そうして幸せの余韻に浸っている所で、もう入学式の開始時間を過ぎていた。

あぁっこれはお仕置き確定だなーと思いながら、僅かな(怒られないという)希望に思いを馳せた。

無駄だと分かっていても、挑戦したくなるのが人間の性だしね。




この後、1時間遅刻したのにいつもどうりのんーびりとしてた私がたーんと怒られたのは、言うまでもない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

君に届ける ~無気力女子が部活に入ったようです~ くぁるつゆっお @nikomaki2525

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ