過去

憂夢との戦いのあと2人は村のはずれの草原にいた。そこは全く憂夢の被害を受けなかった場所で、村を襲った悪夢を忘れさせるほどだった。夕暮れの風が草を少しなびかせた後ヒナタが口を開く。

「、、、私のせいなんです。」


「どうしてそう思う?あれはただの事故だ。それにお前のやったことはそこらの人間じゃ到底できない事だ。」


「あれは罪滅ぼしです。」


「罪滅ぼし?」

ユウ不思議そうに聞き返す。


「このことは死んだお父さんとお母さんしか知らないことなんですけど、私憂夢が寄りやすい体質なんです。」


「そんな体質聞いたことがないぞ?」

そうユウが言うとヒナタはおもむろに身につけたボロボロのワンピースの胸元に手を入れた。突然の大胆な行動に顔を逸らし少し顔を赤らめるユウを尻目にヒナタはむなもとから首飾りを取り出した。それは紅い宝石のようなものが埋め込まれた少し年季の入ったネックレスだった。


「この宝石、お母さんが私にってくれたんです。これのおかげでその体質が抑えられているんです。強力な憂夢に効がないんですけどね、、、」

ヒナタはさらに続ける。

「私のお父さんとお母さんは憂夢に殺されました。」

ユウは驚いた。村人と言っていることが違うからだ。


「流行病で亡くなったんじゃないのか?」


「はい。村のみんなはそう思っています。村の人たちが何人も亡くなりましたから。」


「何故お前はそれが憂夢の仕業だと分かるんだ?」


「お父さんとお母さんが私を守って死んだからです。」

少し冷たくなった風が強く吹き、草のなびく音と肌寒さがふたりを包む。風の音が止み、少しの静寂が二人の間に流れたあと、彼女はこう切り出した


「あれは5年ほど前の出来事です。」


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