テレビ見てたら貞子さんが出てきたので反省させてみた

トカゲ

虎のマスクは良いマスク

 仕事をクビになった俺は気分転換に録画してあったタイガーマスクWを見ることにした。


 どうせだから一気に見てしまおうと全話通しで見ていたんだけど、これからって時にテレビ画面が砂嵐になってタイガーマスクが見れなくなってしまった。


 すぐに砂嵐は晴れたけど、何故か画面にはタイガーマスクじゃなくて何処かの古井戸が映っている。不思議に思って見ていると、画面に映っている井戸から髪の長い女性が這い出てきた。


 女性はこちらにゆっくりと近付いてくる。

 俺はそれを見てイライラしてきた。俺はこんなのじゃなくてタイガーマスクがみたいのに、何を見せられているというのか。


 女性がどんどん近付いてきて、ついにテレビ画面に手を掛ける。ズルリ、とテレビから女性が這い出てきた。女性の顔は長い黒髪で隠れていて隙間から恨みがましい目が見えるだけだ。


 女性がゆっくりと近づいてくる。

 近付いてきた女性に俺は思いっきり平手打ちをした。


 「ばか! 時間を考えろ!」

 「………!?」


 俺は時間を考えられない奴は嫌いなんだ。

 何でタイガーマスクの最終戦が始まる時に出てくるのかね。嫌がらせか!


 「そこ! 正座しろ、正座!」

 「……!?…??」

 「正座だつってんだろ!」


 俺の大声に女性はビクッと肩を震わせて正座をした。

 しかし、見れば見るほど陰気な女性だ。髪で9割顔が隠れているのが陰気に見える原因じゃないか? なんか勿体ないな。


 「ちょっと待ってろ」


 俺は輪ゴムを持ってきて女性の髪を後ろで束ねてみた。

 うん、これだけでも結構雰囲気違うな。美人じゃん。


 女性はキョトンとした顔でこちらを見ている。彼女は自分が悪い事をしていると思っていないんだろうか? 普通に不法侵入なんだが。


 「お前な、今何時だと思ってんだ?」

 「……3時?」

 「そうな。深夜3時だな。こんな時間に知らない人の家に来て良いと思うか?」

 「………」

 「おい、返事だよ、返事!」

 「……ダメだと思います」


 そうだな、ダメだよな? じゃあ何で来ちゃったんだよ。

 しかも玄関のチャイムも鳴らさずにテレビからとか非常識だろ。

 あんた結構いい歳だろ? 20代後半くらいか? 常識って分かる?


 「だって、このほうが怖いと思ったんだもん」

 「だもんじゃねーよ。年齢を考えろ」


 もういいよ。取り合えずテレビ画面なおせよ。

 俺はタイガーマスクがみたいんだよ。


 「あ、はい」

 「ついでにあんたもタイガーマスク見てくか? せっかく来たんだし」


・・・


 その後、一緒にタイガーマスクの最終戦を見たら意気投合したのでそのまま彼女と最初からタイガーマスクを見直した。


 俺は途中で寝落ちしちゃったけど、彼女はちゃんと最後まで見れたんだろうか?

 机の方を見てみると、そこにはお礼の言葉が書かれたメモが残されていた。


 「あいつ、貞子っていうのか」


 俺は大きく欠伸をした後、仕事を探すために職安に向かった。

 今度貞子が来たときには初代タイガーマスクを見せてやろうかなと思いながら。

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テレビ見てたら貞子さんが出てきたので反省させてみた トカゲ @iguana

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