私は水商売を続けて、まぁ何とかそこそこの生活は出来ていた。


ユキはずっとあの家にいたようだが、早めに結婚して一応人並みの結婚式を挙げて私も出席した。


久々に母やおっちゃんにも会ったが別にどうという事もなく、会話もほとんどなかった。


それからもあまりユキとの交流もなかったが、久々にメールが来た。

タイトルは「大変」

本文は「母ちゃん、ガンらしい」

ただそれだけだったが、詳細が分からないので電話をしたらどうやら数か月前から食べ物の通りが悪く、喉につかえる感じが続いていたらしい。


どちらかというと病院嫌いの母であったが、さすがに不安になったようで診察の結果「食道がん」と診断され、近々入院するとの事であった。


縁は切ったつもりだったが、やはり急に哀しみに襲われた。

やはり親子というものなのか、血の繋がりとはこういうことなのか?


来週ユキが家に帰るというので私も久々に帰る事にした。


痩せた母を見てもうすでにかなり進行しているのでは?と思ったが、案の定転移していて手術は出来ない、との事。


抗がん剤とピンポイントで放射線治療ということであった。


抗がん剤治療が終われば一旦退院して、また入院、というパターンを繰り返しながら1年程で亡くなった。


死ぬ前はほとんど寝たままであまり意識もはっきりしてない状態が続いていたようで、ユキと交互に病院には行ってたのだが、たまたまユキが病院に行った時に意識がなくなり「医者が今日がヤマと言ってる」というメールが入ったので、慌てて駆け付けた。

そしてその日のうちに亡くなった。


まだ意識のある時に「あんたにこうやって来てもらえるとは思ってなかった。だから物凄く嬉しい」と泣きながら言われたので私も「もういい」という気持ちになり不覚にも涙が出た。


しかし何故か「おっちゃんはいい人や。あんないい人、いてない」と言ったので涙を返せ!という心境にもなったが、「そう思うんやったらそうやろ。それでええんちゃうか」と言っておいた。


あれからもう10年以上経つが、1周忌も、3回忌、7回忌も行われていない。

いつ亡くなったのか命日さえ思い出せない。


たしか寒い頃、2月頃だったと思う。

墓参りも行ったことはない。というかどこに墓が存在してるのかさえ知らない。


子供の頃を思い出すと、母が恋しくいつも「母ちゃん、母ちゃん」と泣いていた。


しかし、どうしても許すことが出来ない。

もしかしたら私も結婚して子供を産んだら分かるのかもしれないが、もうその機会を逃してしまった。


やはり母は親として失格であった。

今も許していない。


そして私は昨日も夢を見た。


おっちゃんに性器を立てて追いかけまわされている夢であった。




                               完

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毒親 @blue-rose

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