生贄
もうこれ以上家にいるのは嫌だった。
でも、だからといって高校生の私に何が出来るというのか、死ぬ事を思いついたが、それすら怖くて出来なかった。
おっちゃんは相変わらず、夜になると部屋に入って来た。
いつもパジャマの上からクリトリスを触られたり、硬くなった性器を押し付けてきたり、唇に押し当ててきたりといった行為を繰り返していた。
それでも黙って我慢していたのは、遠慮があったからだ。
母は私達よりおっちゃんを優先している事は明らかだったし、私の味方をしてくれるとは思えなかった。
母もおっちゃんの機嫌を損ねたくないという気持ちが強かったはずだ。
生活のために。
その頃は、店も順調だったし、その辺の主婦に比べたらずっと自由になるお金は多かったはずだ。
そういうものを失いたくないと思っていたのは分かっていた。
母は知っていたはずだ。
それなのに娘を生贄としてクソ男に差し出している、自分がほんの少しだけ贅沢したいためだけに。
それに、私の事を嫌っている。
馬鹿じゃねぇのか?ライバルだと思ってる。私の事を敵だと思ってるんじゃないの?色ババァ!
いつしかそう思うようになってきていた。
当時、ヤツらはいつも一緒にお風呂に入っていたのだが、ヤツらの入った後にたまたま入ったら、風呂場に見た事もない物が置いてあった。
人形だ。
これが「大人のオモチャ」ってやつかとすぐに理解したが、たまらなく嫌だった。
この日を境に母に対しては嫌悪感を抱くようになった。
お前らが何をして遊ぼうがお前らの自由や、でも後始末くらいしとけ。
何食わぬ顔でお風呂から出て、ヤツらとは口も聞かなかった。
翌日、確認したら大人のオモチャは消えていた。
ばばぁ、恥ずかしくないのか?そういう目で見てやったが、何食わぬ顔をしていた。
恥知らずめ。
昔から男をとっかえひっかえ浮気ばっかりしてたくせに。
自分がババァになった途端、娘を生贄か?
憎しみしかなかった。
毎日、バイトと夜遊びで家に帰る時間は遅かったが、その日は早めに帰らなくてはならなかった。
ユキから「ちょっと姉ちゃんに聞いて欲しいことがあって」と言われていた。
丁度、店長が「これ、持って帰っていいよ」と言ってくれた売れ残りをゲット出来たので、ユキも喜ぶはずだ。
好きな男の子でも出来たのかもしれない。
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