偽家族
母が気付いていたという事はショックだった。
気付いてて欲しくない、知ったら母が悲しむと思っていたから。
悲しい思いをして欲しくないから我慢して黙ってたのに・・・・
しかし、その反面もうバレてしまったのだから、おっちゃんは触ってこないだろうという安堵感もあった。
そして実際それからはもうおっちゃんも触りにくる事もなくなったので安心していた。
その後すぐにユキが小学校を卒業し、私達の元にやって来る事になったのだが、さすがに部屋が狭いので一軒家、といっても長屋であるが借りることになり私達は引っ越した。
私は新しい友達もできていたので寂しい気持ちはあったが、最初から「短期間」という事は分かっていたので、仕方ないと割り切っていた。
引っ越し当日、新しい家(とはいえ、かなり古い長屋であった)に私達の全ての荷物が届いたのだが、引っ越し業者と一緒に何故かそこには父の姿があった。
母は絶句し、「何であいつが・・・」と言ったきりおっちゃんと2人でどこかへ行ってしまったのだが、私も話する事なくまた父も黙っていた。
荷物を運び終えると父は黙って引っ越し業者と共に帰っていった。
2階は2部屋あって、階段上って手前がユキ、奥が私の部屋ということになった。
私が自分の部屋に入るためには必ずユキの部屋を通らねばならないのでユキは不服そうであったが、そこは長女の特権で奥の部屋を獲得した。
そこには懐かしい2段ベッドがあった。
2段ベッドは取り外して1段にする事が可能なため、そのまま使用する事になったようだ。
本来は新しい家具に買い替えたりするのであろうが、経済的に無理だったのだろう。
と、いうのも母とおっちゃんは商売を始めていた。
食堂の経営を始めたのだが、まだその商売がうまく軌道に乗るかどうか分からないような状態で、2人は「とにかく赤字でも3年はやってみよう」というような話をよくしていたので、経済的な負担はかけられないという事はよく理解していた。
母とおっちゃんは入籍もせず中途半端な状態で、正確には「母子家庭」であったが、表面上というか見た目には、両親と娘2人の4人家族であった。
偽家族の生活が始まった。
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