気配
おっちゃん
マエカワさんの事はそう呼んでいた。
昔からずっと「おっちゃん」と呼んでいたので一緒に生活するようになってからもおっちゃんと呼んでいた。
おっちゃんは父とは違って暴力を振るうわけでもないし、それなりに可愛がってくれたと思う。
服なども買ってくれたし、お小遣いもちゃんとくれた。
おっちゃんにしてみれば赤の他人の子に、だ。
しかも、一緒に生活するようになって分かった事なのだか、おっちゃんにも娘が2人いて(奥さんがいる事は何となく想像ついていたが)上の娘は私と同い年、下の娘はユキと同い年という偶然だった。
母が家を飛び出して、それでおっちゃんも家を出る決心をしたのだろう。
今でいうW不倫というやつだが、まぁいってみればいい歳したオッサンとオバハンがお互いの家庭を捨て駆け落ちしたのだから、それなりに本気だったのだろう。
そこへ私やユキを引き取る事になったのだから、やはり計算ミスだったのかもしれない。
彼らにとっては想定外だったのかもしれない。
数か月は何事もなく過ぎて行った。
新しい中学校でもすぐに友達は出来たし、毎日楽しく過ごしていた。
そんなある日、夜中にふと何かの気配で目が覚めた。
ユキが来たら引っ越しする事は決まっていたが、ユキが来るまでは寝る時は3人で川の字になって寝ていた。
母は真ん中であったが、確かに私の横に人がいる。
しかも、私は下半身を触られている。
しかしどうしても声が出せない。出ない。
何故だか分からない。でも、出ないのだ。
ショックで動く事も出来ない。
やっとの思いで寝がえりをうって逃れた。
朝、顔を合わせてもおっちゃんんはごく普通だった。
もしかしたら私の勘違いなんだろうか?夢でも見たのだろうか?
いや、そうではない。
その日から毎日、手が伸びてくるようになったのだから。
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